「殺処分はむごい 一刻も早くワクチン接種を」豚コレラ 埼玉・養豚農家の切なる願い | トピックス

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2019年9月26日 @niftyニュース







飼育していた豚の豚コレラ感染が確認され約1300頭の殺処分を余儀なくされた埼玉県小鹿野(おがの)町の養豚業、神田武さん(76)が、国がワクチン接種実施へ方針転換したことを受けて毎日新聞の取材に応じた。殺処分を「こんなにむごいことはない。頭の中は空っぽで今は何も考えられない」と振り返り、国に対して「これ以上、被害農家を出さないためにワクチンを希望する農家には一刻も早く接種すべきだ」と訴えた。【松山彦蔵】

 同県秩父市の養豚場では今月13日、関東で初めて感染が確認され、17日には約5.5キロ離れた神田さんの養豚場で県内2例目の感染が判明。全頭の殺処分や消毒などの防疫作業が20日に完了したものの、24日には同市内で感染した野生のイノシシが確認されている。

 神田さんは「がらんとした豚舎を見ると寂しい。長年、妻と2人で世話してきた元気な豚が親から子まで全頭処分となってしまい、こんなむごいことはない」と途方に暮れる。「地域の皆さんに(交通規制などで)大変な迷惑をかけて申し訳ない。昼夜を分かたず防疫作業をしてもらった県職員らに感謝している」と強調した。

 豚コレラは1980年代に全国で伝染して約1万頭が殺処分されたが、ワクチン投与で徐々に抑え込み、国が2007年に「豚コレラフリー(撲滅)宣言」をした歴史がある。養豚業を始めて50年以上になる神田さんは「これまでの経験からワクチンの効果を身にしみて分かっている」と語る。昨年9月に岐阜県で豚コレラが発生して以降、県をはじめ畜産関係者には何度もワクチン投与を訴えたものの、聞き届けられなかったという。


神田さんの養豚場で感染が判明した後、国はワクチン接種へ方針を転換した。神田さんは「国の対応は遅い。秩父市の例と合わせて2軒の豚が犠牲になったから方針が変わったと思うことがせめてもの慰めだろうか」と肩を落とす。国に対しての思いを「希望する農家には明日からでも接種を認めるべきだ。知り合いの畜産家は恐れおののいている」と語る。接種された豚や豚肉の流通制限が論じられていることについては「事業に支障が出る。一律の枠をはめず、とにかく生産者ら現場の声に耳を傾けてほしい」と訴えている。

豚とイノシシが感染、人には感染せず 感染防止にワクチンが有効

 豚コレラは豚コレラウイルスによる伝染病。豚とイノシシが感染し、致死率は高いとされている。人には感染せず、感染した豚の肉や内臓を食べても健康に影響はない。

 国内では昨年9月に岐阜市の養豚場で26年ぶりに豚からウイルスが検出された。中部地方では野生イノシシの感染例が相次いで確認されており、イノシシを介して養豚場に広がった可能性がある。

 感染防止にはワクチンが有効とされるが、接種すると国際機関から「非清浄国」に格下げされて輸出が難しくなる可能性があり、政府は接種に慎重だった。感染拡大が続き、群馬、千葉など一大産地に近い埼玉で感染が確認されたことから、政府は接種を認める方針に転換した。