犬猫殺処分「ゼロ」近づく 譲渡推進や避妊助成実る 福岡市と北九州市 | トピックス

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2019年7月30日 西日本新聞










福岡市と北九州市の動物愛護センターに持ち込まれた犬猫の殺処分数が、事実上「ゼロ」に近づきつつある。動物愛護法の改正で自治体が引き取りを拒める規定が設けられ、飼い主からの安易な持ち込みが減少した。民間へ譲渡する取り組みも広がる中、飼い主の高齢化に伴い中型犬の扱いに悩むケースが目立つなど、課題は少なくない。鍵を握るのは、社会の意識改善のようだ。

「由来は不明ですが、ドリームボックスと呼ばれています」。福岡市東部動物愛護管理センターの吉柳善弘所長が、古びた犬の殺処分場所を案内してくれた。閉じ込めてガスを注入する装置は、2013年11月以降使われていないという。

改正動物愛護法は同年9月に施行された。市は、15~18年度の犬の「実質的殺処分数」を「ゼロ」と説明する。

例えば18年度。「捕獲」「引き取り」「負傷犬の収容」を合わせた持ち込みは160匹だった。飼い主に返還したり第三者に譲渡したりした結果、「殺処分数」は12匹。これらの全てが「収容中の死亡」「感染症などを理由としたやむを得ない殺処分」であり、実質はゼロとしている。

やむを得ない場合にも、ガスではなく注射による殺処分を行う。吉柳所長は「避けられない処分は、どうしても年間10匹から20匹は出る」と言う。

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北九州市動物愛護センターの場合、実質的殺処分は犬猫でゼロ、やむを得ない処分が18年度、犬2匹、猫9匹だった。改正法施行前の12年度、犬猫の殺処分数は1400匹を超えており、激減ぶりが分かる。

近年、頭を悩ませていたのは、子猫の持ち込みが多いこと。対策として、市は雌猫(年間2~3回出産)の避妊手術に1匹当たり1万円を助成するなど、出産を抑えようと努めてきた。18年度、所有者不明の子猫268匹、負傷した子猫140匹と、子猫が猫引き取り全体の73%を占めたが、引き取り数自体は5年前に比べ半減した。

福岡市も、手間が掛かる子猫の授乳などを約2カ月間、希望する市民に担ってもらい、その後の譲渡につなげていく「ミルクボランティア」制度を導入している。18年度は80匹ほどを救えた計算になるという。

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自治体によって、ばらつきもある。両市などを除く地域を担う福岡県の引き取り数はまだ多い。比較可能な3年前に比べてほぼ半減したとはいえ、実質的殺処分は18年度で犬254匹、猫626匹に上った。

関係者が口をそろえるのは、“飼い主教育”の重要性だ。

最近、高齢になった飼い主から「飼い続けられなくなった」と、中型犬の引き取りを求める例が目立つ。小型犬より新たな譲渡先は見つかりにくいという。福岡市のセンターの吉柳所長は「定年退職後に子犬から飼い始める人も多い。10年を超えると体力が衰え、散歩など世話をしきれないようになり、飼えない人が出てくる。自分は何歳まで飼育できるかを考え、それに合った犬を最初に選んでほしい」と訴える。

北九州市のセンターの城崎明徳所長は「野良猫への無責任な餌やりをなくし、引き取り数を減らす地道な活動を地域で続けていくしかない」と話している。