手。犬食の是非をめぐって対立してきた食用犬の飼育業者らからも非難の声が上がっている。 (ソウル・中村彰宏、写真も)
安楽死させていたのは、動物保護団体「ケア」のパク・ソヨン代表。ケアは二〇一七年五月、文在寅(ムンジェイン)大統領に、捨て犬だった「トリ」を贈っている。
告発した団体職員によると、パク代表は「動物の数が増えて保護しきれなくなった」との理由で、一五年から昨年までに二百匹以上を薬物を注射して安楽死させ、廃棄するよう指示。外部には「里親に引き渡した」と伝えていたという。
パク代表は今年一月十九日、会見を開き、安楽死の事実は認めたものの、「人道的な安楽死だった」と釈明。安楽死させたのは、けがを負ったり、性格が攻撃的だったりした動物だけだと主張し、代表の辞任は否定した。一方、告発によると、健康な犬や猫もいたという。
別の動物保護団体や市民団体は、ケアが「安楽死のない保護所」を掲げ、会費や支援金で年間約五億ウォン(約五千万円)以上を得ながら安楽死させたのは、詐欺にあたるなどとして刑事告発。警察はこれを受理して捜査を始めた。
韓国では伝統的に滋養食として犬を食べる習慣があるが、ケアをはじめ動物保護団体などは「犬を食べる必要はない」として犬食の根絶を訴えてきた。一方、食用犬の飼育業者らは「犬食は韓国の文化。われわれにも生存権がある」と主張。近年、食文化の変化やペット意識の高まりもあり、より対立が深まっていた。
こうした中での安楽死事件の発覚を受け、業者らは保護団体側への追及を強めている。飼育業者らでつくる大韓肉犬協会は一月、大統領府前で集会を開き、徹底的な捜査と、ケアに対する社団法人認可の取り消しなどを求めた。
「安楽死のどこが動物愛なのか。われわれは虐待も安楽死も絶対にしない」と業者らは批判。「わが国には食用犬と愛玩犬が共存する。それぞれを認めて、法で管理すべきだ」と、政府に対してあらためて食用犬の合法化を要求した。