自治体の積極介入必要 姉妹を書類送検 | トピックス

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2018年9月25日 毎日新聞


愛知県警北署は25日、名古屋市北区の市営住宅で猫約40匹を劣悪な環境で飼育したとして、元住人の49歳と48歳の姉妹を動物愛護法違反(虐待)容疑で名古屋地検に書類送検した。管理できない数のペットを飼育し、周囲にも悪臭などの被害を及ぼす「多頭飼育崩壊」は社会問題化しており、専門家は自治体などの積極的な介入の必要性を指摘する。

 姉妹の書類送検容疑は共謀して4月上旬~6月6日ごろ、猫約40匹を排せつ物が堆積(たいせき)する不衛生な部屋で飼育し、虐待したとしている。動物愛護法は罰則で100万円以下の罰金を定めている。

 北署によると、姉妹は「掃除が面倒になり、どうでもよくなってしまった」と容疑を認めている。名古屋市などによると、姉妹は昨年2月に複数の猫を連れ入居したが、無職で1匹1万数千円の費用を工面できずに不妊去勢手術をしなかったため、数十匹に増えて飼育が難しくなった。


悪臭など近隣の苦情を受けた市の請求で姉妹は今年6月に強制退去させられ、猫45匹は市動物愛護センターが保護し、うち20匹は新たな飼い主に引き取られた。動物愛護団体が7月に姉妹を告発した。

 欧米では、管理可能な限度を超えた数のペットを飼う人は「アニマルホーダー(過剰多頭飼育者)」と呼ばれて問題化し、日本でも認識が広まっている。

 多頭飼育を共同研究する米タフツ大と民間団体は、多頭飼育崩壊を招くアニマルホーダーについて、最低限の餌やりや居住スペースの提供▽ペットや周囲への悪影響の認識--ができない状態にあると分析した。劣悪な環境下の飼育なのに「虐待ではなく、助けている」と勘違いしているケースも多いという。

 名古屋市北区の集合住宅で1人暮らしの男性(63)は2014年ごろ、路上で拾った子猫4匹を飼い始めた。不妊去勢手術をせず、2年後に67匹まで増えた。「20匹ぐらいまでは名前を付けていた。気付いたら部屋が荒れていた」と振り返る。

 近所の苦情で動物愛護団体が男性方に入った時は、汚れた部屋に死骸や排せつ物が放置されていた。男性は「どこに助けを求めていいか分からなかった」と話す。男性は団体の支援を受けながら30匹の飼い主を見つけ、残る37匹の飼い主を探している。

 名古屋市は来年度から、多数の動物飼育について届け出を義務付ける方針。動物愛護団体「花の木シェルター」(名古屋市西区)の阪田泰志代表は「多頭飼育崩壊が起きてしまう前に行政が早い段階で把握し、安く不妊去勢手術をできるようにする仕組みが必要」と提言する。【高井瞳】



【ことば】多頭飼育崩壊

 おおむね10匹以上に犬猫などが増えて、正常に飼育できなくなった状態。不妊去勢手術を怠って繁殖させてしまった個人の飼い主▽経済的その他の事情で管理できなくなったブリーダー▽保護する犬猫が増えすぎたボランティア--の類型がある。飼い主が死亡したり、いなくなったりして、室内に放置された犬猫が共食いするなどの悲惨な例もある。