7/22(日) 22:29配信 毎日新聞

ペットを連れた避難者向けのスペースで愛犬と過ごす藤原明美さん(右)と柴田重利さん=岡山県倉敷市真備町地区で2018年7月20日、幾島健太郎撮影
災害時の避難所ではペットとの避難生活も課題だ。ペットの鳴き声や衛生面でトラブルになりがちだが、西日本豪雨の被災地では、ペット同伴者の避難所や避難スペースを設ける動きが広がりつつある。被災者は「ペットは家族と一緒。離れるのは考えられない」と安心した表情を見せている。
浸水被害がひどかった岡山県倉敷市真備(まび)町地区の避難所の一つ、市立二万(にま)小学校では、校舎2階の5年生の教室をペット同伴者専用に。床が汚れないようにブルーシートを敷き、エアコンや扇風機も完備し、暑さに弱いペットにも優しい環境だ。1歳のキャバリアと避難してきた藤原明美さん(43)は「室内で一緒に過ごせるので安心」と愛犬の体をなでた。避難してきたのは今月7日だが、「ペットはダメ」と言われ、冷房のない渡り廊下や屋外で寝起きしていた。見かねた獣医師らが避難所に掛け合い、15日から教室を使えるようになった。
同市は21日から、真備町地区に隣接する玉島地区の市立穂井田(ほいだ)小にペット同伴者専用の避難所を開設。ペットを連れた一部の被災者が市外に避難していることがわかり、開設を決めた。体育館には養生シートを張り、ケージやペットフードも備え、9世帯22人、犬10匹が暮らす。ヨークシャーテリア(6歳)を連れて真備町地区から避難した山本英子さん(46)は「避難所で断られ、ずっと車の中で寝ていたが、ここでは足を伸ばせる」と喜んでいた。
広島県熊野町も14日以降、町民体育館にある会議室など2室をペット同伴者に提供し、9世帯が犬と寝起きする。コーギー(2歳)の毛づくろいをしていた男性(66)は「室内飼いなので助かった。『家族』が離れることにならなくてありがたい」と笑顔を見せた。
ただ、ペット同伴の避難スペースはまだ一部のようだ。愛媛県大洲市の平公民館では豪雨後、犬を連れた避難者3組を断った。うち2組は水が引くまで避難所の近くで車の中でペットと過ごした。同県はペットとの同行避難を推奨しているが、今のところ当事者からの相談はないという。【近藤諭、林田奈々、蒲原明佳、木島諒子】
◇ガイドライン、環境省が配布
2011年の東日本大震災では、飼い主とはぐれて放浪するペットが続出。一緒に避難できた場合でも、動物アレルギーがある避難者らとの間でトラブルが多かった。このため環境省は13年に「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を作り、各自治体に配布した。飼い主とペットが一緒に避難することを基本とする一方、動物が苦手な避難者に気配りし、避難所で一緒にならないよう配慮すべきだと定めている。他にも、鳴き声や臭いによるトラブルの防止▽平時からの予防接種や寄生虫駆除による衛生管理▽獣医師による巡回診療--などの必要性も示されている。【山口知】