ペットの「多頭飼育崩壊」 高齢者、手に負えず 不妊去勢、助成する自治体も /岐阜 | トピックス

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毎日新聞

 

 

 飼い犬に餌や水を与えず虐待したとして、先月、大垣市に住む男(69)が動物愛護法違反と県動物愛護条例違反の疑いで逮捕された。マンションの増加や金銭面の負担などから、犬を飼う世帯は減少傾向にある一方、高齢世帯の飼育率は横ばいだ。1人暮らしの高齢者の場合、地域から孤立しやすく、体力面の不安も出てくる。不適切な飼育環境による繁殖などで「多頭飼育崩壊」が起きる可能性があり、自治体などは対応に苦慮している。【横田伸治】

 

 「かわいそうなことをして申し訳ない」。23日に大垣簡裁であった初公判で、男は動物愛護法違反などの罪を全面的に認めた。男は飼っていた犬が一時約30頭に増え、逮捕前には手に負えない状況に陥り、飼育を放棄していた。

 

 環境省が2016年度に実施した調査によると、都道府県、政令市、中核市の計115自治体が、住民からの苦情に基づいて複数の犬を飼育している人を指導した件数は、2606件に上った。県内でも16年度に多頭飼育に関する苦情が4件寄せられている。

 

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 対応に乗り出す自治体も出ている。県内では海津市、七宗町、白川町の3市町が、多頭飼育崩壊を防ぐため、不妊去勢手術費用を助成している。海津市では1世帯につき1頭まで、オスは4000円、メスは5000円の助成が受けられる。

 

 繁殖などで飼育ができなくなったペットは、自治体の保健所が引き取るが、飼い主が事前に新たな引き取り手を探したり、不妊去勢手術を受けさせたりするなどの努力をしたことが条件だ。多頭飼育崩壊を起こした飼い主は、そのような努力を怠り、引き取り制度が適用されないケースが多い。岐阜市保健所は「多頭飼育崩壊を起こすのは、経済的に余裕がない高齢者が中心。地域との交流も薄く、『どうしたらいいか分からない』ことが多いようです」と実態を打ち明ける。

 

 一般社団法人「ペットフード協会」が17年に行った全国調査によると、犬を飼育する世帯は12・8%で、前回調査(13年)と比べて約2%減少している。一方で、70代の世帯の飼育率は0・2%減にとどまり、ほぼ横ばいとなっている。

 

 調査では「あったらいいと思う飼育サービス」について、「高齢で飼育不可能な場合の受け入れ施設提供サービス」が28・7%で2番目に多かった。また「ペット飼育を阻害する要因」を聞いたところ、「十分な世話ができない」が27・1%と最多だった。飼育に意欲のある高齢者でも、体力や経済力の不足を理由に飼育を断念する実情があり、実際にペットのいる高齢世帯も同様の問題を抱えているとみられる。これらの調査からは、飼い主の高齢化が望まない多頭飼育崩壊を引き起こしてしまう実情がうかがえる。

 

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 ペットショップは動物を売る際、動物愛護管理法により、飼い主に適切な飼い方や注意点を説明する義務がある。しかし、売り手や買い手にも、特に繁殖に関する知識は浸透していないのが現状だ。県生活衛生課によると、多頭飼育崩壊を起こす飼い主の多くは「こんなことになるとは思っていなかった」と話すという。同課はペットを保護するボランティア団体の利用や手術費用の助成金の利用を推進しているほか、岐阜市は12年から、市内の全世帯を訪問。ペットのいる家庭には飼育状況を尋ねる取り組みを始めるなど、ペットの悲劇を防ぐための啓発活動に力を入れている。

 

犬の世帯別飼育状況

 全体 12.8%(-2.2%)

20代 13.3%(-1.8%)

30代 10.7%(-2.0%)

40代 12.7%(-2.4%)

50代 15.4%(-4.6%)

60代 14.2%(-2.2%)

70代 10.5%(-0.2%)

 ※2017年のペットフード協会の調査から抜粋

 ※カッコ内は13年調査との比較


ペット飼育の阻害要因

1 十分に世話ができない        27.1%

2 集合住宅に住んでいて禁止されている 25.3%

3 お金がかかる            25.0%

4 別れがつらい            22.8%

5 最後まで世話をする自信がない    21.0%

あったらいいと思う飼育サービス

1 旅行中や外出中の世話代行サービス         41.3%

2 高齢で飼育不可能な場合の受け入れ施設提供サービス 28.7%

3 健康保険料、生命保険料などが減額になるサービス  28.0%

4 飼育が不可能な場合の引き取り手あっせんサービス  27.5%

5 老化したペットの世話対応サービス         18.5%

 ※2017年のペットフード協会の調査から