(3月12日) 信毎web
東日本大震災の被災地で保護した猫を抱く矢吹さん。里親が見つからないまま死んでいくペットがいるという
東日本大震災で被災地に取り残され、千曲市の一般社団法人「NGOライフインべスティゲーションエージェンシー」(LIA)が保護したものの、引き取り手のないまま一生を終えていくペットたちがいる。震災直後は関心が高まり、育ててくれる「里親」が現れたが、最近はめっきり減った。人間に比べて寿命が短いペットたちにとって7年は長い。長野市の収容施設で死んでいく姿を目の当たりにしてきたスタッフは「無念」と憂えている。
LIAは、代表で俳優の矢吹蓮(れん)さん(44)=千曲市=ら2人が2010年に設立。現在は全国の約20人で活動する。11年3月の震災直後、置き去りのペットを救おうと被災地入りし、2年間に岩手、宮城両県で計199匹を保護。飼い主の元に返したり、里親を探して譲ったりしてきた。
収容施設は、建設会社に提供してもらったコンテナハウスだ。散歩や餌やりは矢吹さんら2人が担う。これまでに多くのペットを送り出したが、最近は毎月の譲渡会での引き合いは減った。収容施設では今も、被災地で保護した犬2匹と猫7匹が飼い主や里親が現れるのを待っている。
1月下旬、岩手県釜石市で保護した雄猫の「いち」が死んだ。高齢のためか、突然意識を失い、おりの中の高い所から落ちた。矢吹さんは「人工呼吸をしたが駄目だった。舌をぺろっと出すしぐさがかわいかった」と残念がる。一緒に保護し、いつも寄り添っていた雌猫の「ひめ」も高齢で足腰が弱っている。
宮城県で保護した犬2匹もみとった。「人より短命な犬や猫にとって7年は長い。ここで亡くなるのは無念」と矢吹さん。「被災した犬や猫は一時ブランド化したような状況になり、こぞって求められたが、ブームが去るともらわれなくなった」
一方、宮城県で保護した白血病の猫は、いつ死んでもおかしくない状態だったが、身内を同じ病気で亡くしたという長野市の女性に引き取られた。「今も元気に生きていると聞く」と喜ぶ。
矢吹さんは、東日本大震災以外の災害の被災者から、公営住宅のため飼えなくなったペットを預かったり、保健所の殺処分の対象になる犬や猫を引き取ったりしており、現在も40匹ほどを世話している。「再び家族として飼われる生活の中で最期を迎えてほしい」と願っている。
問い合わせはLIA(電話090・1115・5988)へ。