sippo 1/31(火) 11:50配信
劣悪な環境での飼育や病弱なペットの
販売など、犬や猫を取り扱う繁殖業者や
ペット店にまつわるトラブルが
相次いでいる。
動物取扱業者への自治体の監視指導は
十分なのか。朝日新聞の調査では、
一部では業者規制が形骸化している
実態も見えてきた。
調査は16年12月、動物愛護行政を
担う全国115の自治体を対象に行い、
すべての自治体から回答を得た。
その結果、そもそも59%に当たる
68自治体が、動物愛護の担当職員の
数が「足りない」と考えていることが
わかった。
人手が「足りない」と答えた自治体に、
どの業務について足りないのかを
尋ねると(複数回答可)、
最も多かったのは「外部からの苦情や
問い合わせ対応」(56自治体)で、
次に多い40自治体が「動物取扱業者の
監視指導」をあげた。
繁殖業者やペット店など第1種動物
取扱業にかかわる事務を所管するのは
都道府県や政令指定都市など99自治体。
その4割が監視指導について人手不足を
感じていることになる。
実際、13年9月に施行された
改正動物愛護法(動愛法)で新たに
設けられた業者規制についての
対応状況を聞くと、一部の自治体で、
法律の適切な運用が行われていない
実態が浮かび上がってきた。
業者報告の回収50%台の自治体も
まず、犬猫を販売する繁殖業者や
ペット店が各自治体に提出するよう
義務付けられた「犬猫等販売業者
定期報告届出書」。
業者は各年度の終了後、60日以内に
所管する自治体に提出するよう
定められているが、99自治体の
平均回収率は87%にとどまった
(16年12月時点)。
すべての業者から回収したという
自治体が23ある一方、大阪市や
福岡市では回収率が50%台だった。
動愛法を適切に運用すれば、提出を
怠ったり虚偽の報告をしたりした
業者に対しては、20万円以下の
罰金が科される。
また、犬猫等販売業者に対して
備えつけを義務付けた「帳簿」に
ついて確認していない自治体が
三つ(北九州市、埼玉県川越市、高知市)
あった。
帳簿を備えていなかったり、虚偽の
記載をしていたりした場合は、
やはり20万円以下の罰金が科される
規定になっている。
徹底には「数値基準が必要」
改正動愛法で新たに禁止された
幼齢個体の販売に関しても、
監視指導を行っていない自治体が
五つ(神戸市、北九州市、川越市、
高知市、三重県四日市市)あった。
子犬や子猫を生後56日(付則第7条に
よって「別に法律で定める日」までは
49日と読み替えられている)までは
販売してはならないという規制は、
法改正の目玉だった。
業者への定期的な立ち入り調査の
頻度については、「1~3年に1回以上」
という自治体が43%だった。
だが、定期的に行うのは「5年に1回以上」
か、そもそも定期的な立ち入り調査を
していないという自治体も47%に
のぼった。
こうした中で、札幌市や埼玉県三郷市は、
国の規制を先取りする形で「8週(56日)
齢規制」を条例で努力義務化した。
また、東京都の小池百合子知事は
昨年12月の都議会一般質問で
「動物取扱業者に法令順守を
徹底させて、適正に監視指導を
行うためには、犬や猫を飼育する
ケージの大きさなど飼養の施設や
飼養環境に関して、省令などによって
より具体的な基準を盛り込むことが
必要と考えます」などと答弁し、
業者規制に数値基準を入れるよう
国に要望していくことを表明している。
ペットに関する法制度に詳しい
細川敦史弁護士は「自治体職員が
適切な指導監督機能を果たさなければ、
取扱業規制はまさに絵に描いた餅に
なる。人員不足や予算の問題が
あるのなら、自治体職員の負担を
軽減するという側面からも、
取扱業規制について、例えば飼養施設の
大きさや繁殖回数などに関する
具体的な数値基準を盛り込むべき
だろう」と話している。
sippo(朝日新聞社)