わんちゃんホンポ
犬の「性格」は犬個体によって違い、同じ犬種でもおっとりしていたり、せっかちだったりします。
しかし「性質」というのは、人間がその犬を使役する目的に応じて選択繁殖を繰り返し、定着したその犬種特有の行動の傾向です。
例えば同じ猟犬としてのルーツを持つ犬でも、獲物を追いかけ、主人の前に追い込む役目を担っていた「ストップ犬」、主人が仕留めた獲物を回収する「リトリーブ犬」の二種類があります。
「ストップ犬」はセッターやポインター、コッカースパニエルなどで、「リトリーブ犬」はゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーなどです。
また、ダックスフンドは穴熊を狩るために脚を短く改良した犬種です。
この様に、長い時間をかけて様々な犬種ごとに役目に適した体や気質になるよう人間に改良されて現在の犬種が作られました。
その結果、ただ走る事が大好きな犬もいれば、鳥を見ると追いかけたくてたまらなくなる犬、泳ぐのが大好きな犬など、犬種によって「犬の性質」にある程度特色が出る様になりました。
つまり犬種によって「こんな運動がしたい!」という欲求が違うのです。
また、いわゆる「小型犬」というグループで分けられている体重が10キロ未満の犬種には、チワワ、トイプードル、ヨークシャーテリアなどの他に、ジャックラッセルテリアも同じくらいの体の小さな犬です。
体の大きさが同じでも、それぞれに改良され小型化されてきた経緯と目的が違うので、好きな運動や「走りたい」「遊びたい」という気持ちの強さが違うのは当然の事だと思いませんか?
あなたの愛犬は満足してる?
あなたが愛犬を家族に迎え入れた時、その犬種の成り立ちを知った上で、どんな運動を好み、どれくらいの運動量が必要かを知っていましたか?
「小型犬だから散歩は必要ない」
「ラブラドールは盲導犬にもなれる犬だから、あまり運動は必要ない。盲導犬は走ったり遊んだりしないでしょう?運動しなくても不満を持って暴れたりしませんよ」
などのペットショップで聞いたセールストークを鵜呑みにして、子犬を家族に迎えたら大変な事になります。
例えば、「飼い主のために働きたい」という欲求を「作業欲」と言いますが、ラブラドールは特にその欲求が強い犬種だと言われています。
散歩の際に投げたボールを持って来させたり、人や物を探し出す訓練などをしてやれば満足しますが、ただ歩き回るだけの散歩だと「作業欲」が満たされず、大きな体で家の中で走り回ったり、人と遊ぼうと体当たりしたりします。
この様に、大人しくて温和と言われているラブラドールでさえも意外な欲求を持っていて、それが満たされないと欲求不満になります。無意味にテンション高く飼い主さんにじゃれついたり、家の中で走り回ったりして、「飼いやすいと聞いたのに、家の中はボロボロだし、散歩では引きずり回されるし・・・こんなに大変だとは思わなかった…」と飼い主さんが愛犬を持て余す事になってしまうのです。
あなたは自分の愛犬の「性質」についてどれだけの知識を持っているでしょう?
あなたの愛犬が本当に必要としている運動量やどんな遊びが1番好きなのか、自信を持って言えますか?
犬種に合った飼い方
何種類か性質が際立っている犬種をご紹介します。
ビーグル
もともとはイギリスでウサギなどを追いかける猟犬としてのルーツを持っているので吠え声が大きく、遠くまでよく響きます。猟犬でしたので運動量はかなり必要ですし、活発で遊ぶ事も大好きです。
とても利口ですが、まったりマイペースなのでトレーニングに時間と根気が必要だと言われていて、その上、甘えん坊で寂しがり屋です。飼い主さんに構って欲しい気持ちが強すぎて、飼い主さんの気を引く為にイタズラをする事もあります。
ビーグルを飼う時の注意点寂しさを感じさせない様に、留守番を少なめにする根気よくトレーニングする1日2回、30〜40分の散歩が必要
さらにトレーニングやボール遊びなどを組み込むと、満足してイタズラなどしなくなります。
柴犬
飼い主に非常に忠実で頭も良いので、躾もしやすく我慢強い性質です。日本の気候にあった犬なので手間は掛からないと思われますが、実は換毛期の抜け毛の凄まじさは、まるで丸裸になってしまうのでは?と心配になってしまうほど。
また、昔から番犬として飼われていた歴史を持つので警戒心が強く、飼い主や家族以外にはなかなか心を開きません。
そして家庭内でも縄張りを持ちたいという欲求を持つので、家の中でフリーの状態で飼うと「家の中全部守らなきゃ!」とずっと気を張ってストレスを溜めてしまいます。
最近ではかなり温和になったとはいえ、柴犬は凛々しい見た目から想像する以上に荒々しく、気が強いところがあります。
柴犬を飼う時の注意点ブラッシングを怠らない(特に換毛期は念入りに)家の中にクレートやケージを設置し、縄張りを持たせる散歩は1日2回30分以上必要「甘えさせる」「1人で過ごさせる」のメリハリをつける
ジャックラッセルテリア
体そのものは小型犬のグループに区別されるほど小さく、ペットショップにジャックラッセルテリアの子犬がいたらその体の小ささと活発に動き回る愛らしさに惹きつけられてしまいます。
ところがジャックラッセルテリアは非常に運動能力が高く、小型犬とは思えないほどの運動量を必要とします。
ジャックラッセルテリアは小型犬ながら、愛玩犬として改良された犬ではなく、体も性質も猟犬としての能力をとことん突き詰めて改良された犬種です。主人に獲物の位置を知らせるストップ犬でもなく、主人が仕留めた獲物を回収するリトリーブ犬でもなく、自らがウサギを追いかけ、仕留める事が出来るまで訓練されたタイプの猟犬です。
しかもその様々な犬種と掛け合わされた結果、ジャックラッセルテリアの性質にはかなりの個体差が出る様になりました。飼い主に従順な個体もいれば、自分こそがリーダーだと頑固に思い込む個体、他の犬や動物、人と社交的に接する事の出来る個体、全く社交性のない個体など、見た目では判断出来ないほど個体差があります。
もしも、犬を飼った事がなく犬をトレーニングした事のない人がリーダー気質のジャックラッセルテリアを飼ったら、「咬まない」「待て」などの基本的なトレーニングするだけでも大変な苦労を背負い込む事になるでしょう。
体は小さくても、中身は警察犬になり得るほどの身体能力を持っているジャックラッセルテリア。
つまり、ジャックラッセルテリアを家族に迎える時は、愛玩犬の姿をした大型の猟犬を迎えるつもりの心構えが必要なのかもしれません。
ジャックラッセルテリアを飼う時の注意点思い切り咬んだり飼い主の指示を全く聞かないなどの性質が見られたら、ドックトレーナーなどプロの指導を受ける他の犬とも問題なく触れ合える様にトレーニングするしっかり運動できる様に1日2回1時間以上長めの散歩が望ましいドッグランなどにも積極的に連れて行く
ラブラドールレトリバー
盲導犬や救助犬など、人の為に働く使役犬の中でも特に有名な犬種ですね。
子犬の時は、小さな体に太めの脚、表情豊かでよく遊ぶ愛らしさが魅力ですし、成長したら体は大きくても「とても利口なので躾もしやすく飼いやすいだろう…」と思って家族に迎える人が多い人気の犬種です。
「レトリバー」の名前の通り、飼い主が仕留めた獲物を藪からでも水の中からでも回収する「リトリーブ」犬としてのルーツを持っているので、ボール遊びや水遊びが大好きです。
自らが獲物を追いかけ仕留めるタイプの猟犬と違い、性格も温和で飼い主に従順です。
また非常に食いしん坊でもあります。
子犬の時から甘やかさず、毅然と「良い事」「してはいけない事」をしっかり躾れば、飼い主さんをリーダーとして信頼し、最高の家族になるでしょう。
ラブラドールレトリバーを飼う時の注意点散歩は1日2回1時間くらいが望ましい散歩の中にいろいろな訓練を組み込む運動不足と食べ過ぎによる肥満に注意子犬の時の躾は甘やかさずに毅然と行う
まとめ
共に暮らす家族を選ぶのに、性質の特性で選り好みするのは一見とてもドライで、まるで自分にとって都合の良いものだけを選んで買い物をする様な感覚を感じてしまう人もいるかもしれません。
全ての犬が飼い主さんと幸せな時間を共に生きていけるのなら、ペットショップで「一目惚れしたから」「可愛かったから」と運命的な出会いを感じたのが理由でも、それが安易だと非難される事でもありません。
けれど飼い主の手に余り、「咬むから」「吠えてうるさいから」など信じられないほど身勝手な理由で、保健所に自らの犬を持ち込む人が実際にいるのです。
飼い主の無知と不勉強によって不幸になる犬がいなくなる様に、もしあなたの近くに「今から犬を飼う」と言う人がいたら、その犬がどんな犬種かをよく調べて自分のライフスタイルにその犬種がふさわしいかどうかを考える様に、アドバイスしてくれる事を願っています。