安楽死を提案されるも、『特別な椅子』で難病を乗り越えたジャーマン・シェパード | トピックス

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身近で起こっている動物に関する事件や情報の発信blogです。


Tsunayoshi より

みなさんは、巨大食道症という病気を
耳にしたことはありますか? この聞き慣れない
名前の難病は、治療が困難とされています。
しかし、ある『特別な椅子』のお陰が
巨大食道症を患う犬にとっては救世主だと
いうことが分かりました。

食後に嘔吐する子犬、その原因は?

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アメリカはニュージャージー州にある
動物保護団体Funny Farm Rescueには、 
個性溢れる顔ぶれが揃っています。
動物の赤ちゃんの面倒をみるのが大好きな
マネージャー的存在のオーストラリアン・
シェパードのファーリーを筆頭に、
アルビノのクジャク、リッキーが続きます。
そして、今回ご紹介するチャック。 

チャックはジャーマン・シェパードで、
レスキューの警備担当です。農場を歩き回る
チャック。一見、どこにでもいる普通の犬の
ように見えます。ところが、食事の時間がくると、そうではないことがすぐに分かります。 

チャックとFunny Farm Rescueの巡りあわせは、団体の創立者のローリー・ザレスキーの友人が
当時まだ子犬だったチャックのことを 
相談したことから始まります。
ブリーダーから購入したというその子犬は、
食べたものを胃に留めておくことが
できませんでした。 

不審に思ったローリーは、子犬を動物病院へ 
連れて行くよう指示しました。すると、
チャックが巨大食道症を患っていると診断されたのです。

巨大食道症とは、どんな病気?

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私たちには馴染みのない病気である巨大食道症。食道が何らかの原因で拡張した状態になる
疾患です。胃に食べ物を運ぶための食道の
神経が欠損していたり上手く機能しないのが
原因です。その結果、食べ物や液体を胃まで
運ぶことが出来なくなり、食道で溜まってしまうのです。 

この病気は先天的なものもあれば、後天的な
ものもあります。猫よりは犬に多くみられる
そうです。特に、ジャーマン・シェパードは
巨大食道症になりやすい犬種です。 

流動食を流すために胃にチューブを通すのが
一般的で、それ以外はこれといった決定的な
治療法はなく、予後はあまり良くないと
されています。 

チャックが巨大食道症と診断された後、
その友人は世話をし続けることは困難だと
判断し、子犬をシェルターに連れて行くことに
しました。しかし、もしチャックがシェルターに行けば、かなりの確率で殺処分されるであろうと確信したローリー。なぜなら、チャックのように特殊な病状がある犬にとっての里親探しは困難を極めるからです。 

そこでローリーはチャックを自分の施設に
連れて帰ることにしました。2013年3月の
ことです。

意外にもベビーチェアーが役に立った!

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チャックの病状は想像以上に悪いことが
分かりました。獣医師が今まで診た患畜の
中で重症のケースで、手術では治る見込みがないと診断されました。 

獣医師はチャックに流動食用のチューブを提案しましたが、ローリーは断固として拒否。
チャックにはなるべく普通の生活を送らせたいと思ったからです。 

宣告はそれだけではありません。恐らくチャックは1年ももたないだろうから、安楽死の道を選ぶのが最善なのではないかとさえ獣医師に提案されました。 

しかし、ローリーは諦めませんでした。 

どうしたらチャックが問題なく食べることができるか調べたローリーは、ある物に辿り着きました。それは、友人から譲り受けたベビーチェアー。これに直角に座ることで、食べた物が重力の関係で逆流せずに胃に留まり続けることが出来るのです。 

生後3ヵ月のチャックは、訓練の結果、ベビーチェアーに座って食事することをマスターしました。


難病から命を救った魔法の椅子

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現在、3歳になったチャック。さすがに 
ベビーチェアーからは卒業し、代わりに 
ベイリーチェアー(bailey chair)に
座っています。 

チャックは決して箱の中に入って
ふざけているわけではありません。
もしチャックがこの姿勢以外で食事をすると、
嘔吐してしまうのだそう。 

食後は暫く椅子の中で過ごす必要があります。
しかし、このベイリーチェアー、よほど座り
心地がいいのか、チャックは食後によく
居眠りしてしまうことも。 

チャックが使用しているベイリーチェアーは、
巨大食道症の犬にはよく使用される特別な
椅子なのだとか。日本ではまだ知名度が
低いベイリーチェアー。したがって、海外の物をお手本にして椅子を手作りする飼い主の方も
いるようです。 

アメリカでは、巨大食道症の犬には 
ベイリーチェアーは必須と認知されています。
その証拠に、インターネットで検索してみると、ベイリーチェアーを専門に作るショップや専門のサイトが出て来ます。この点、アメリカは
進んでいるなと感心させられますね。 

この魔法の椅子のおかげで、巨大食道症の犬が
何千匹と救われるでしょう。たとえ不治の病で
あったとしてもちょっとした工夫で、
犬たちを安楽死させる必要がなくなるのは
素晴らしいことです。日本でもこの椅子の存在が幅広く知られるようになり、悲しい思いをする
犬と飼い主が減ることを強く願います。 

参照:Dog Was Born Different, So He Has To Eat In A Special Chair