捨て猫の涙、殺処分年8万匹の現実 ボランティアに聞く | トピックス

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西日本新聞 9月30日(金)11時28分配信

路上で車にひかれた猫の死体を見掛けた
ことがある方は多いはず。福岡市では
年間に約7千匹の死体が回収されており、
大半は捨て猫が生んだ子猫という。
哀れだからと餌をやるだけでは、ふん尿や
ごみあさりが住民の苦情を招き、
引き取り手がなければ殺処分される
無残な循環が繰り返されている。
そんな哀れな命をどう守るかに取り組む
ボランティアの人々がいる。同市の
家庭動物啓発センター(西区内浜1丁目)
が毎月第3日曜日に開く「犬猫よろず相談」
で現状を聞いた。


不妊・去勢手術を受けた猫たち。手術済みの印として耳先をV字にカットする(福岡市家庭動物啓発センター提供)

「死に方も、かわいそうな例が多い」
 2014年度に全国で殺処分された猫は
約8万匹。同市でも08年度まで年2700匹を
超える数が殺処分されていたが、
飼い主にはペットが死ぬまで飼う責任が
あることを啓発する活動に力を注ぎ、
受け入れはやむを得ない場合に限っている。
このため、ここ数年は500匹を下回って
いるが、猫を捨てる行為がなかなか
減らないのは、冒頭の死体の回収数が
示す通りだ。

 「その死に方も、かわいそうな例が
多いんです。親がいない子猫は交通事故に
遭いやすいだけでなく、カラスにも
襲われるんです」

 そう話すのは相談員を務める
ボランティア団体「TNR博多ねこ」代表の
木本美香さん(54)。TNRは「猫をわなで
捕まえて不妊手術を施し元の場所に戻す」
(トラップ・ニューター・リターン)と
いう活動を表す英略語だ。

 木本さんは「息子が拾った猫を育てる
うちに動物愛の心に火が付いて、殺処分
される猫を減らそうと活動を始めました」
会社勤めの傍ら、飼い主探しや室内飼育の
指導、そして野良猫を増やさないため
獣医師と連携し不妊・去勢手術の普及に
努めている。わなは猫を傷つけないよう
餌を入れた籠を使う。

 「野良猫は食べ物が良くなったことも
あって寿命が15~20年に延び、その間に
年2~3回、一度に4~5匹も出産するんです。
その子猫たちの不幸を考えれば、地域で
不妊と去勢に取り組むのが大事なんです」

外部の人のルールを守らない餌やりは
取り組みを損ないかねない

 トリマーの山口みわ子さん(38)も
野良猫問題に取り組む「ライフ・リレー・
ネットワーク」の代表だ。同市中央区の
大濠公園や西公園にすみ着く猫を、
管理事務所など地元の人々と連携して
「地域ねこ」として管理、保護している。
これまでに100匹近く手術を受けさせたが
「捕獲作業を始めて4年たった今も、
問題はなかなか解決しなくて」と話す。

 猫の餌は量を管理しなければ余った分が
腐って悪臭を放つし、よその猫やカラスを
集めてしまう。外部の人のルールを
守らない餌やりは取り組みを損ない
かねない。「猫の問題は、結局は人と
人との信頼の問題なんです」

 不妊・去勢事業の支援には、
各地の自治体や県獣医師会も
取り組んでいる。



●「共に生きよう」啓発イベント
 福岡市で10月

 福岡県獣医師会は野良猫の繁殖を
防ぎ、殺処分される猫を減らそうと
2010年に「あすなろ猫事業」を始め、
これまで約3100匹に不妊、去勢手術を
行ってきた。だが、捨てられるなど
して命を全うできない猫は後を絶たない。

 同会いのちをつなぐ委員会の
中岡典子委員長は「猫ブームの今だから
こそ、こうした現状を知ってもらいたい」
と10月22、23日午前10時~午後5時、
福岡市・天神のパサージュ広場で
啓発イベント「共に生きようプロジェクト」
を開く。

 啓発パネル展示や保護猫の譲渡活動紹介、
獣医師による飼育・健康相談、行政書士の
ペット信託紹介コーナーのほか、写真集
「うちの猫ら」(オークラ出版)で知られる
吉松文男さん=大分県別府市出身=の
写真展、猫グッズの販売、音楽ステージ
などもある。参加無料。
同会=092(751)4749。

西日本新聞社