アライグマ 暴れ放題 農家困惑 九州で急増、捕獲7倍 | トピックス

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日本農業新聞 9月23日(金)7時0分配信

愛くるしい顔で野菜や果実などを
食い荒らす、特定外来生物
「アライグマ」が九州で急増して
いる。環境省によると九州7県の
捕獲数(2013年度)は約3000匹と
5年前の7倍に急増。全国の捕獲頭数は
同1.6倍で九州の増加が際立つ。
これまで出没していなかった地域にも
生息域を広げており、被害は深刻化する
一方だ。現場の不安は募っている。


アライグマによる被害。かみちぎられたかん水チューブ(佐賀市で)

かじったり 折ったり ちぎったり・・・

 ワイヤメッシュを巧妙にすり抜けて
ブルーベリーの実を食べ、枝を折り、
かん水チューブもかみちぎる。
イノシシ用の箱わなにも侵入し、
対策が機能しない――。

 15年度捕獲数が824匹と、5年前の
約10倍に拡大した佐賀県。佐賀市で
ブルーベリー70アールなどを栽培する
高島勝美さん(68)は
「いくら捕まえても減らん。駆逐不可能。
手に負えん」と頭を抱える。

 アライグマによる被害が表面化して
きたのは8年ほど前。「最初は何に
やられているのか分からなかった。
わなにかかって初めて正体が分かった」と
高島さん。猟友会で捕獲を進めるが、
生息数は増え続けている。


アライグマを捕獲する小型の箱わな(佐賀県小城市で)


頭良く器用「手に負えぬ」

 県果樹試験場も困り果てる。多い年は
場内で栽培する果樹の2、3割が食害を
受けた。今年は過去最多の10匹を捕獲。
子どもの個体も増えており、
繁殖している恐れが強いという。市に
捕獲許可を申請し、職員10人ほどが
自ら捕獲や殺処分を担う。
ワイヤメッシュだけでは侵入を防げない
ため、上段に電気柵を設置し、
被害防止に躍起だ。

 稲富和弘副場長は「侵入前に
捕まえないと抑えられない」と強調。
急増の要因として「山づたいに行動する
イノシシとは違い、トラックの荷台に
まぎれ込み、広範囲にわたって移動して
いるのではないか」と推測する。

 県も「木や柵をよじ登り、畜舎の
扉まで開けてしまう」(生産者支援課)
と頭の良さに手を焼く始末。
「アナグマなどと混同し、被害を
見過ごしている可能性もある」(同)
とみる。

 これまで出没していなかった
九州南部にも広がっている。熊本県は
13年度、鹿児島県は14年度、宮崎県は
15年度に初めて捕獲した。宮崎県は
今年度からアライグマの生息調査を始め、
被害拡大に危機感を強める。

 農業経営に詳しい中村学園大学の
甲斐諭学長は「生息域は広がりつつある。
電気柵の設置などアライグマの特性に
合った対策を早めに講じる必要がある」
と指摘する。(松本大輔)


<ことば> アライグマ

 北米原産。1970年代に人気を博した
テレビアニメの影響で、ペットとしての
輸入が増加。その後、飼育放棄で野生化が
進んだ。年間3~6頭を出産し、繁殖力が
強く国内には天敵がいない。これまで
北海道や兵庫、神奈川県などで多く
確認されたが、近年は温暖な九州まで
生息域が拡大。農水省によると、
14年度の農作物被害額は3億3405万円。
家屋侵入など生活環境への被害も多く、
人に感染するアライグマ回虫や狂犬病を
媒介する懸念もある。

日本農業新聞