飼い主なら知っておきたい「ペットフード安全法」のこと・後編 | トピックス

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@DIME (2016.09.22)

前編に続いて、フード以外の暴露源の
可能性を探るためハウスダストの元素の
特徴を比較解析。このグラフでは、
青いグラフがドッグフード、赤いグラフが
キャットフード、黄色いグラフが
ハウスダストを示している。

この分析結果では、Cd(カドミウム)、
Pb(鉛)はペットフードでも検出されるが、
ハウスダストでも高い数値を検出。
これについて寶來先生は、「Cd(カドミウム)
とPb(鉛)はどちらかというと、
ハウスダストが暴露源に大きく寄与して
いるのではないか?」という見解を述べた。

また、As(ヒ素)はキャットフードと
ハウスダストが同じぐらいでドッグフード
よりも高く、Hg(水銀)はキャットフードが
最も高く、ドッグフードとハウスダストは
同じぐらいという結果も明らかとなった。

イヌ・ネコの体内濃度比較と暴露との関係解析



続いて、元素はどの臓器に蓄積されるのか、
イヌとネコに違いはあるのかどうかを
調べるため、数値差がほとんどなかった
肝臓を除く、腎臓と脳2つの臓器を比較した。
青いグラフがイヌ、赤いグラフはネコを表し、
上の表が腎臓、下の表が脳の分析結果と
なっている。この結果でわかったことは、
イヌは腎臓に元素を蓄積する傾向にあり、
ネコは脳に元素を蓄積する傾向にあると
いうこと。

これについて寶來先生は、「大雑把に
話してしまえば、代謝の違いが反映されて
いるのではないかと思いますが、
この結果は非常に興味深いので、今後、
詳細を突き詰めていこうと思います」と
述べた。


中でもHg(水銀)とPb(鉛)は顕著な
変化を見せており、Hg(水銀)はネコより
イヌの腎臓に蓄積しやすく、イヌよりネコの
脳に蓄積しやすい傾向にある。そして
Pb(鉛)は、イヌよりネコの脳に
蓄積しやすい、という結果が明らかとなった。


続いて、ほかの野生動物とHg(水銀)の
濃度を比較した際に違いが現れるのかを
分析したところ、肝臓、腎臓とも総体的に
野生動物よりもイヌとネコのほうが高いと
いう結果となった。

これについて寶來先生は、「人間と共生する
シナントロープがゆえに、体内にHg(水銀)を
蓄積してしまう可能性があるのではないか?と
考えています。今後、暴露源を詳細に探索
したいと思っています」と述べた。

「ペットフードを考える- 微量元素の視点から-」
まとめ

◆ペットフードの安全性確認(法律上)
◆キャットフード:As・Hg高値
◆ハウスダスト:Ag, In, Sn, Tl, Bi
◆元素蓄積特性
ネコ:体内As・Hgはフード由来の可能性
・体内からイヌよりもハウスダスト
 由来元素検出
・多くの元素は腎臓より脳に分布
 イヌ:体内Rbはフード由来の可能性
・Fe・Cd・Hgが特徴的 → 他の暴露源の
 存在 or 特異的代謝機構
・ハウスダスト由来元素は検出限界値以下
・多くの元素は腎臓に分布
◆脳中Hgリスク評価:イヌ2検体で
 毒性発現レベルの超過
◆Hg種間比較:イヌ・ネコ>
 野生陸生哺乳類
 →シナントロープであることが
 暴露レベルを高めている?


そして最後には、ペットフード安全法で
定められたペットの元素上限値とヒトを
対象にした元素上限値の比較を紹介。
ペットフード安全法で定められている
As(ヒ素)、Cd(カドミウム)、Pb(鉛)の
3つの強毒性元素は、ヒトとペットで
最大15倍の上限値間の差があるほか、
ヒトには上限値が設けられている
毒性元素のHg(水銀)がペットフード安全法
では設定されていない点、ペットフード
安全法で設定された上限値には、種や性差、
年齢などが考慮されていない点などを強調。
このことから、ペットフード安全法で
設定した上限値について、今後、再検討する
必要性があるのではないか?と寶來先生は
指摘した。

また今後は、「イヌのCd(カドミウム)、
Hg(水銀)の暴露起源の探索」
「ペット疾患と体内微量元素との関係解明」を
中心に研究すると話しており、こちらの
分析結果については、新たな発表があり次第、
改めてレポートしたいと思う。

構成/オビツケン(ペットゥモロー編集部)