愛媛県立とべ動物園(砥部町)は
今年から、家畜や小動物などを除き、
園内で死んだ動物を全て公表している。

動物の死を積極的に公表する取り組みを始めた
県立とべ動物園(砥部町で)
これまでは赤ちゃんの誕生を
広報する一方で、動物の死は、
注目度が高い場合を除き知らせて
こなかった。方針転換の背景には、
動物の死を知ることで命の大切さに
ついて考えてほしいとの願いがある。
同園では6月から7月にかけて、
ヒグマのガブ(雄、29歳)、
ニホンツキノワグマの花子(雌、28歳)、
ジャガーのプリメーラ(雌、20歳)、
クロクモザルのサル吉(雄・23歳)が
老衰や病気などで相次いで死んだ。
いずれも象などのように注目度が高い
動物ではないが、報道機関や
ホームページを通じて発表した。
動物の死は、動物園にとって好ましい
ニュースとはいえない。
動物がいなくなると園の魅力が減るうえ、
場合によっては飼育や展示の方法に
ついての批判を招きかねない。
それでも同園が公表に踏み切ったのは、
「動物の死を通じて、生きることや命の
大切さを子供たちに学んでほしい」という
渡辺清一園長(64)の思いからだ。
獣医師でもある渡辺園長はかつて
県動物愛護センターの所長を務め、人間の
身勝手で見捨てられ、処分される犬や猫を
数多く見てきた。昨年4月に園長に就任し、
動物の愛らしい様子を見てもらうだけでは
なく、いつかは死んでしまうことや命の
重みについても考えてもらいたいと、
公表を思いついた。それぞれの動物には、
知名度にかかわらず様々な思いを持つ
ファンがおり、プリメーラが死んだことを
聞いて花束を持って訪れた人も。
こんなところにも、積極的に公表する
必要性を感じているという。
同園では164種約620頭を飼育し、
年間30頭ほどが死ぬという。2年後に
開園から30年を迎え、動物の高齢化の
問題にも直面している。渡辺園長は、
「老いるということも含め、動物園が
命を学ぶ場となってほしい」と話している。
(蛭川真貴)
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