熊本を中心とする地震で、
ペット連れの避難者が行き場を
失っている。
環境省はペットとの
「同行避難」を推奨しているが、
多くの避難所が室内への連れ込みを
禁止。
ボランティア団体などは
一緒に生活できるよう支援に
乗り出しているが「車中泊」
など不便な生活を強いられている。
【共同】
■廊下や屋外に雄
避難所の一つ、熊本県大津町の
老人福祉センター。
自営業今村たえ子さん(64)は
建物入り口の隅に段ボールを敷いて
のヨークシャーテリア(5歳)と暮らす。
「犬がほえるからここを離れられない」。
おとなしかったのに地震後、
ほえたりうなったりするようになった。
毛が散らかるので、玄関をよく
掃除しているという。
被災地では避難所の廊下や屋外、
駐車場に止めた車内でペットと
一緒にいる人が目立つ。
環境省は2013年、
災害時はペットとの同行避難を原則とし、
自治体に態勢整備を促す指針を作った。
東日本大震災でペットとはぐれた人が
多かったのが教訓だ。
しかし「鳴き声がうるさい」
「かまれた」といった苦情もあり、
室内への同行を認めない避難所は多い。
熊本県八代市は屋内に入れるのは
「同伴避難」として禁止。
担当者は「アレルギーや感染症、
臭いの問題に配慮した」と説明する。
長野県の動物愛護団体
「LIA」代表矢吹蓮さん(42)は
「同行しようとしたら駄目と言われ、
行き場を失っている」と指摘。
自治体が許可しても避難所が
いっぱいで「5カ所回ったのに、
入れなかった」という相談も
あったという。
支援の動きも出てきた。
熊本県益城町のペット連れ
専用テント村。
同町の主婦宮崎律子さん(64)は
「家族だから」とダックスフントを
抱きかかえる。
最初に起きた14日の地震で
自宅が倒壊。
夫と子ども2人で犬3匹を連れ出し、
着の身着のまま避難所へ。
しかしペット連れ込みは禁止され
、車内で一緒に寝泊まりしていた。
NPO法人
「ピースウィンズ・ジャパン」
(広島県神石高原町)がペット連れの
避難者にテント村を設営したと知り、
やってきた。
10畳程度の広さがあり
「周りもペット連れで気を使わずに済む」と喜ぶ。
■市町村に丸投げ
熊本県菊陽町の犬カフェ
「ひなたぼっこ」は、飼育できなくなった
犬を無料で預かっている。
受け入れた犬は延べ60匹以上。
100件を超す問い合わせがあった
日もある。
経営者の生松義浩さん(55)は
「県も同行避難を推奨しながら、
市町村に対応を丸投げした」と指摘。
専用避難所などの対策を取るべきだった
と訴える。
ペットの健康も心配だ。
飼い猫と車中泊する熊本県南阿蘇村の
無職中谷良太さん(89)は
「震災後、餌をあまり食べなくなって心配。
かかりつけの動物病院と連絡が取れない」と
不安そうに話す。
熊本県獣医師会は熊本市や
益城町に健康相談所を設置。
けがをした動物の応急手当てや
一時預かり相談に乗っている。
福岡県獣医師会による
「災害派遣獣医療チーム(VMAT)」も
2014年の発足後、
初の本格的な活動を開始。
獣医師が避難所を回っている。
同獣医師会の船津敏弘さん
(59)は「動物は人のストレスに
影響されやすく、疲れが表に出てきた。
様子がおかしければすぐに近くの獣医師に
相談してほしい」と呼び掛けている。

熊本県益城町のペット連れ専用
テント村で愛犬のダックスフントを
抱える宮崎律子さん=4月24日