動物園の余剰動物問題:死んだシマウマは天王寺動物園の「バロン」 | トピックス

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身近で起こっている動物に関する事件や情報の発信blogです。

2016/04/01PEACE by 事務局

捕獲作業でシマウマが死亡… 感じた幾つかの疑問

愛知県内の乗馬クラブから逃げた
シマウマが3月23日、
岐阜県内のゴルフ場に逃げ込み、
捕獲作業によって死亡するという
痛ましい事件がありました。

シマウマは、愛知県内の移動動物園業者が
乗馬クラブに預けたものだと
報道されており、吹き矢で
麻酔薬を何発も打たれた後、
池に倒れこんで溺死しました。

テレビ・新聞等で大々的に
報道されましたので、多くの方が、
心を痛めたことと思います。

しかし、報道を見てみて、
疑問に思ったことがありました。

一つは、この捕獲方法でいいのか?
ということです。

ゴルフ場で人間がシマウマを取り囲んで、
捕まえようとしてはヒョイと
避けられるようなことをして
いましたが、本当にこれで捕まえ
られるのか? 

結果として亡くなってしまった
ことについても、シマウマなど
扱ったことはないであろう
警察や獣医を簡単に責めるわけには
行きませんが、多くの人が疑問を
抱いたのではないでしょうか。

そして、シマウマは3月22日の
乗馬クラブ搬入直後に脱走した
ものでしたが、シマウマがもといた
場所はどこなのだろう?という
疑問もわきました。

移動動物園のような業者が手に
入れる大型の野生動物といえば、
ありうるのは、どこかの動物園が
手放した余剰動物です。

2歳のオスのシマウマ
(おそらくは成長してきて要らなく
なったシマウマ……)を手放した
動物園はどこなのだろう? 

乗馬クラブと移動動物園業者は
シマウマの扱いについて明らかに
プロではなく何も期待できませんが、
その動物園は捕獲作業には
関わらないのか?というのも疑問でした。

縞の特徴が一致する! 天王寺動物園の「バロン」

インターネット上には、
大阪の動物園から来たという
書き込みがあり、グラントシマウマを
飼育している大阪の2カ所の動物園の
シマウマの情報を見ていたところ、
なんと天王寺動物園が2014年9月1日に
アフリカサバンナゾーン草食動物
エリアで展示を始めたと報道されている
グラントシマウマの赤ちゃん
(雄、当時名前未定)の縞模様の特徴が、
岐阜のゴルフ場で亡くなったシマウマの
縞と合致することに気がつきました。

年齢も合います。

翌日の朝、天王寺動物園に確認したところ、
亡くなったシマウマは同園から
搬出したもので間違いないとの答えが
返ってきました。名前は「バロン」。

まさか天王寺動物園のような有名動物園が、
今回の移動動物園業者のようなところに
動物を放出しているとは驚きですが、
3月22日まで同園にいたことは
間違いありません。

同園はバロンの譲渡先を見つけることが
できず、他の動物とまとめて動物商と
動物交換を行ったとのことでした。

バロンの譲渡先を決めたのは動物商であり、
天王寺動物園は報告を受けただけですが、
行き先の施設がどのようなものかの
確認もせずバロンを搬出してしまったのは、
やはり天王寺動物園の過失では
ないでしょうか。

シマウマを逃がした乗馬クラブには、
死亡の当日、愛知県の動物愛護行政が
立入を行っており、報告の提出を
命じるなど指導中の状況ですが、
やはりシマウマのために用意した
施設が不十分なものだったことが
原因というのが今のところの見解です。

シマウマの死亡は、動物園の
余剰動物問題の延長だった…

そもそもバロンの繁殖自体が不幸で
あったと思います。

オスであるために、もらい先もなく
同園からも出さなければならない。

要らなくなる動物が出るとわかって
いても繁殖を行い、将来手放す
動物であっても集客のため何かと
広報する動物園。結局譲渡先は
確保できず、動物商だのみ……。

動物園は、本当にこれでいいので
しょうか。

今、動物園業界が騒いでいる
「動物がいなくなる!」は、
「ほしい動物がいなくなる」の意味で
あって、いらない動物はいらない
ままなのです。

こういう動物たちは、
余剰動物と呼ばれています。

天王寺動物園の広報誌のサイトに
載っている、あどけないバロンの
写真を見ると胸がつまります。

お母さんと引き離されて、
見知らぬところでトラックから
降ろされ、とても怖かったから
逃げただけなのに、たくさんの人間に
追い掛け回されて死ぬことになるとは、
まさか思っていなかったでしょう。

これは本当に悲しい出来事でした。

でも、他の多くの余剰動物たちが、
譲渡先で「生きていても地獄」の
生を送っていることも、
忘れてはいけないことなのです。

捕獲にも助言ができたのでは… 

天王寺動物園によれば、
シマウマを何もないところで捕獲
するのは難しく、柵のあるところなど、
どこか捕獲できるような場所に
追い込んで網などを使う必要が
あるとのことでした。

バロンが逃げたことは知っており、
到着までに時間がかかるので
出動しなかったとのことですが、
遠隔から指示を出すことはできたと
思います。

バロンを助ける気持ちがあれば
動けたのではないでしょうか。

バロンは、天王寺動物園では、
飼育員が直接接することのない
間接飼育で育てられており、
お母さんも一緒に暮らしていました。

インターネット上に残っている
移動動物園業者のツイッターの
投稿によると、天王寺動物園内で
3月8日から馴致作業をしていたか
のようですが、これはあくまで移動用の
檻に慣らす作業を開始しただけの話です。

人間に慣れている馬とは違う
のですから、ある程度シマウマの
ことを知っている園の協力が
不可欠だったのではないかと思います。

大阪市に抗議書を送付しました

きちんとした施設を用意できない
業者に動物を放出したこと、
そもそも余剰動物が生じるような
繁殖が行われていること、
また捕獲作業に関与しなかった
ことについて、大阪市に対して
抗議書を送りました。

詳細は以下の通りですが、
この事件が天王寺動物園、
ひいては動物園業界全体に
改善を及ぼすものであって
ほしいと私たちは願っています。

このような不幸な事件が
二度と起きないよう願いつつ……。