米国で進む 小児がんの苦しみや辛さを和らげるセラピードッグの研究 | トピックス

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2015年12月13日 12時00分
提供:CIRCLアメーバニュース


世界中で100万人に50~200人という
割合で発生する「小児がん」。

年々生存者は増えてきているものの、
長期にわたるがん治療は、
体の痛みや疲労などの身体的な影響
だけではなく、
PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、
精神面にも多大な影響を与える。

 しかし最近の研究で、
セラピードッグと接することで、
小児がん患者を落ち着かせる
可能性があることが分かった。

■小児がん患者のセラピードッグ、
アメリカの5つの病院で研究が開始


 Amy McCullough博士は、
子どもや動物の虐待・放棄の原因を特定し、
防ぐことを目的としたアメリカの
動物愛護団体
(American Humane Association)で、
人道的研究とセラピー部門の監督者を
務めている。

 そのMcCullough博士の主導で
行われたのが、小児がん患者のストレス、
不安、健康状態と関わる生活の満足度に、
セラピードッグの利用を含んだ
動物介護療法が良い影響を
与えるかどうかの調査だ。

 患者だけでなく、
その親のストレスや不安、
患者と触れ合うなかでセラピードッグが
苦痛に感じるかどうかも、
調査された(※1)。

■4ヶ月間、セラピードッグと触れ合い


 調査はアメリカの5つの病院で、
がんと診断された3~17歳の
子どもたちと、その家族に協力して
もらい行われた。

 被験者は、通常の治療を受けるグループと、
通常の治療に加えて、週1回セラピードッグと
15分間触れ合う時間を設けたグループに、
ランダムで分けられ、4カ月の間、
決められた間隔で患者と両親それぞれの
不安感と生活の満足度が調べられた。

また、セラピードッグとのセッションの
始めと最後には、患者の血圧と脈拍も
測定している。

 セラピードッグの状態は、
ビデオに記録されたセッション中の様子や
調教師の報告、セッション中に採取された
唾液中のストレスホルモン量で判断された
(※1)。

■セラピードッグと接したあと、
小児がん患者の血圧と脈拍が安定


 68人のがんの子どもたちが参加した
予備調査の結果、通常の治療を受けた
患者たちに比べて、セラピードッグと
触れ合った患者たちの血圧は、
すべてのセッションで安定していたという。

 脈拍も、通常治療のグループでは
大きな乱れが見られたが、
セラピードッグと接したグループでは
安定していた。

また、セラピードッグの存在は、
犬たちと接したグループの両親にも
穏やかな気持ちを与えた。(※2)。

■セラピードッグはなぜ小児がんの
子どもたちを落ち着かせるのか


 週1回15分という短い時間にもかかわらず、
セラピードッグと接することが、
子どもたちの心の安定に効果が
あったのはなぜだろうか。

 理由の一つとして、
病院で過ごすことに対する抵抗を
緩和してくれることにある。

慢性的な痛みや治療に立ち向かう
子どもたちは、“患者”としての
新しい生活に適応するという壁を
乗り越えなければならない。

 しかし、子どもたちが毎日接する
環境のなかでセラピードッグの存在が
当たり前のように思えると、
病院が異質なものではなくなり、
自宅のような居心地のよさが
感じられるのだという。

また、セラピードッグと一緒にいることで、
ネガティブな感情や大変な現実から
少し距離を置くことができたり、
誰かとのつながりや見返りのない
愛情を感じることもできたという(※3)。

 McCullough博士ら研究チームは、
本調査に続き、新たに同数程度の
被験者を集め、再度データ収集を
行うという(※2)。
さらに明確な結果が出れば、
世界中でセラピードッグを
取り入れる病院が増え、
小児がん患者の治療の成果も
向上することだろう。

※1:The Effects of Animal-Assisted Interventions (AAIs) for Pediatric Oncology Patients, Their Parents, and Therapy Dogs at Five Hospital Sites/McCullough A., et al. https://aap.confex.com/aap/2015/webprogrampress/Paper30412.html ※2:Medical News Today http://www.medicalnewstoday.com/articles/301476.php ※3:Examining the Effects of Therapy Dogs With Childhood Cancer Patients and their Families; p.29-32/American Humane Association http://www.americanhumane.org/interaction/programs/animal-assisted-therapy/canines-and-childhood-cancer.html?referrer=https://www.google.co.jp/ 参考:International Childhood Cancer Day: 15 February 2015 http://www.who.int/cancer/media/news/Childhood_cancer_day/en/