わんちゃんホンポおすすめレポートより

奇跡を起こしたのは人の優しさ
オーナーは汚れた迷い犬の毛を綺麗に
トリミングし、営業中も目の届くところに
いさせたいと、迷い犬をとても大切に
してくれましたが獣医師からワクチン接種は
できないといわれオーナーは来店する
お客様に丁寧に事情を話します。
ホームページやお店の入口にも
注意書きを出しました。
「迷子を保護しています。
ノミダニ予防はしていますが、
身体の状態が悪くワクチン接種が
できていません。
フィラリアも陽性です。
もし、ワンちゃんが予防などをされて
いない場合はご遠慮いただいた方が
良いかもしれません。
たいへん申し訳ありません。」
ほとんどのお客様は
「大丈夫ですよ」と、カフェを
利用して下さいましたが
「汚い」
「わざわざ助けなくても
良いんじゃないの?」
という方もいました。
彼女は、やり切れない気持ちが
顔に出てしまいます。
ひどいことを言われて傷つくのは
犬も一緒だからねとオーナーは
優しく話しかけます。
「とっても可愛いよ。良い子だね」
そんなオーナーの姿をみて彼女は、
懸命に飼い主さんを探して
お世話もしっかりしていきました。
多くの人の力
迷い犬をカフェで預かるようになって
1カ月を過ぎるころには、
応援して下さる人も増えてSNSや
犬友達のネットワークを使って
この子の情報は広がりました。
迷子になっているうちの子かも
しれない
飼い主さんが見つからなかったら
引き取っても良い
という方もいらっしゃいました。
吠えることもなく、
昼寝をしていることが多かった
迷い犬は発作もなく、食欲も安定して、
優しく抱きしめてくれるお客様や、
応援してくれる人のおかげで
表情もやわらかくなっていきました。
保護から2か月ようやく
飼い主さんが見つかりました。
カフェを利用した方が
SNSにこの子の写真を載せてくださり、
それが飼い主さんの目にとまったのです。
驚くことに、40キロも離れた
他県で飼われていて6か月まえに
行方不明になった子でした。
なぜこんな遠くまで来たのかは
分かりませんが、
4カ月もの長い間必死に生き延びてきた子です。
飼い主さんとの再会
フィラリアの予防はしておらず
、何度か痙攣発作をおこしたことが
あったそうですが、とくに治療などは
しないという考えの飼い主さんでした。
「飼い主さんが、明後日お迎え
に来たいっていうけどどうする?」
飼い主さんのところに戻るのが
当たり前だけど、返してしまったら
治療をしてもらえないのではないかという
不安が二人にはありました。
オーナーは飼い主さんに電話をかけ直すと
迷い犬の病状を詳しく説明しました。
今後の治療が必要なことや、
外飼いでは長く生きられないことを
伝えます。
すると
うちの周りでは犬を家の中で
飼ってるところなんてない
病気になってもそれは寿命だ
とにかく引き取りにいく
このような返事が返ってきました。
オーナーは柔らかに話を続けます。
この子の治療も含めて責任をもって
里親さんになりたいと
いってくれている人がいること
お薬を飲ませてくれれば、
苦しい思いをさせないですむこと
せめて玄関先でも良いので
おうちの中に入れてもらえないか
ということ
飼い主さんは年配の男性で、
強い口調で
「ひとんちの犬に大きなお世話だ」と
いって迎えにいくというと電話を
切ってしまいました。
本当に飼い主さんのところへ
返しても良いのか、
せっかく落ち着いているこの子の病状が
悪化してしまえば残された時間が
短くなってしまうかもしれません。
なにが正しいのか答えを出せずに、
お迎えの日を迎えることになりました。

ほんとうの名前
迎えに来たのは、飼い主さんの
お孫さんご夫婦でした。
女性の姿を見ると初めて元気な声で
吠えました。
本当の名前を呼ばれると目を輝かせ、
ちぎれるほど尻尾をふり、
お腹をだして再会を喜んでいます。
助けて頂いたのに、
祖父が失礼なことをしてしまって
申し訳ないと謝ると、女性は自分のところで
飼うので迎えに来たと話します。
すぐに帰ってくるだろうと
迷子の届け出などはせずに、
時間ばかりが過ぎてしまったそうです。
何日も帰ってこないこの子を
心配し届け出を出したり、
迷子の情報を見ていてSNSで
写真を見つけたのはこの女性でした。
病状や治療のこと、
室内飼育のことをしっかり理解して
「ご心配でしたら、いつもで自宅に
いらしてください。」とのことで、
この女性に犬を返すことを決めました。
時々祖父の家に遊びにいくと、
外に繋がれたままのこの子を
不憫に思っていたそうですが、
祖父は古い考えの人で
「番犬」として犬を飼っていて、
散歩は無くご飯だけを与えていたそうです。
時々シャンプーに連れて行ったり、
一緒に遊んだりしていましたが、
結婚し犬が飼える環境になった時に
引き取りたいと申し出ても
断られていたそうです。
ですが、また同じ生活をさせれば
死んでしまうと祖父を説得し
ご自分で引き取ることにしたそうです。
今まで、大人しくしていた子が
リードをグイグイと引張り車へ
飛び乗っていきました。
最後に
このご夫婦と一緒に元迷い犬のこの子は
何度もカフェへ遊びに来たり、
お手紙と写真を下さったり、
大切にしてもらっている様子を
見ることができて、
彼女もオーナーも大きな喜びを
感じることができました。
ですが、迷子になってしまった子が無事に
飼い主さんのもとへ帰れる確率は
高くはありません。
そして、迷い犬を見つけてもその命を
預かるということはとても
難しいことです。
「助けたい」
「かわいそう」
その気持ちが1つの命を繋ぐことに
なることは確かですが、
命を預かるということには
大きな責任が伴います。
これは、犬を飼い始める時と
同じ責任です。
一度預かった命には最後まで
責任を持つことは迷い犬を
助ける時も同じです。
助けたいけど助けられない。
そんな苦しい思いをされた方も
多いのではないでしょうか?
命を預かるということ、
行き場所を失った命に向き合うと
いうこと、皆さんはどのように
感じられましたか?