ドイツ最大の保護施設を訪ねて(その1) | トピックス

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身近で起こっている動物に関する事件や情報の発信blogです。

時事ドットコム特集より


★すべて寄付で運営

日本では、年間に
約17万5000匹(2011年度)の
犬猫が殺処分されている。

13年9月施行の改正動物愛護管理法では
、飼い主が持ち込む犬や猫の引き取りを
自治体が拒否できるようになるなど、
伴侶動物(コンパニオンアニマル)で
一部前進があったが、まだまだ
不十分な点が多い。

一方、欧州の中でも先進的な
動物福祉国のドイツでは原則として
殺処分は行われず、「ティアハイム」
という全国に約1000施設ある民間の
シェルターが動物を保護している。

動物を救うために、どんな取り組みが
行われているのか。

このほど首都ベルリンにある
最大規模のティアハイムを訪ねた。
(文化特信部・森映子)

 ベルリン中心部から東へ約10キロ。

車で20分ほどの郊外にある
「ティアハイムベルリン」の門をくぐると、
総面積18万5000平方メートルの
緑に囲まれた広大な敷地が広がっていた。

ベルリン動物保護協会が運営する
この施設は、1901年に設立された
旧施設が手狭になったため、
2001年に現在の場所に移設された。

 動物は年間1万~1万5000匹が
収容され、おおよそ4割が放浪、
野良など飼い主不明だったり、
劣悪な環境で飼われていたため
獣医局から没収されたりした動物だ。

残りの約6割は、飼い主の死亡や
動物アレルギー、引っ越しなどの
理由で引き取られた。

獣医局が押収した動物については、
行政が保管を委託する料金として
年間60万ユーロがティアハイムに
支払われている。

これは、施設の年間維持費800万ユーロ
(約10億4000万円)のうちの
約7・5%に過ぎない。

保管期間を過ぎた動物に対する
不足分はティアハイムが負担している。


構内は広々としていて犬連れで
訪れる人も【時事通信社】


 従業員は約140人。

その上、約600人のボランティアがいて、
動物の世話、犬の散歩、広報活動などを
行ったり、譲渡後に里親を訪ねてその後の
様子を確認したりしている。

動物を保護後2~4週間収容する
検疫室や病院もあり、スタッフの数は
獣医師、動物看護士それぞれ10名前後。

年間予算の収入は、市民と企業からの
寄付金で賄われている。

施設を案内してくれたベルリン在住の
獣医師、アルシャー京子さんは
「行政からの助成金は一切受けて
いないため、政府に対し公平な立場で
動物福祉施策について提言が
できるのです」と説明する。


ティアハイムベルリンの
カラフルでかわいい入り口
【時事通信社】

★清潔で涼しい猫棟

最初に訪問したのは猫棟。


自然光が入り明るく
広々とした猫棟
【時事通信社】

ガラス張りの広々とした個室に、
猫がごく少しずついる。

掃除が行き届き、ふん尿などの臭いは
まったく感じない。

片側の個室で過ごしているのは、
病気で療養中のほか、人間に
慣れていない猫。

人慣れしてきたら大部屋に移り、
譲渡対象として里親を待つ。

個室、大部屋ともに室内とテラスに
出られるように猫用の穴がある。

ベッド、おもちゃ、爪かき、キャットタワー
などが豊富にあり、それぞれ好きな
場所でまどろんだり、遊んだり。

近づくとすりすり、ごろごろ
寄ってくる人懐こい猫もいる。

 猫1匹ごとに名前、生年月日、
保護された理由などが記された
写真付きの自己紹介カードがケージに
貼り出されている。

この日は日曜日で、たくさんの人が
見に来ていた。

「猫の住環境が清潔で、ゆったりと
楽しいものでなければ、訪れる人は
『飼いたい』と思えないだろう、
という考え方で運営されています」と
アルシャーさん。

重い心臓病を持つ猫が個室で過ごして
いたが、この猫には毎月定額を治療費と
して支援する市民の「スポンサー」が
付いており、猫の説明カードに
その人の名前が記されていた。

10歳以上のシニア猫棟もある。


譲渡対象の猫【時事通信社】

 驚いたのは、元野良猫の棟があること。
通常、野良生活が長く人間慣れして
いない猫は、保護して避妊・去勢手術を
施した後は、元いた場所に戻して
地域猫として暮らしてもらう。

しかし、元のすみかが工事中などで
環境が悪化している場合は保護する
そうだ。

元野良たちは大きな草むらで
群れ飼いされ、あっちこっちの
草やかごの中に身を潜めて丸まって
おり、見つけるのが楽しい。

何ともまったりとした空間で、
猫好きにはたまらないかもしれない。