THE PAGE 大阪より
http://osaka.thepage.jp/detail/20141230-00000010-wordleaf
[写真]飼い主たちが見守る中、犬たちが元気に駆け回る=大阪市鶴見区鶴見緑地駅前エリアの鶴見緑地パートナードッグタウン
寒風を切って元気に走り回るワンちゃんたち──。犬が自由に運動できるドッグラン施設と保護犬の 譲渡施設を統合した鶴見緑地パートナードッグタウンがこのほど、大阪市鶴見区の花博記念公園鶴見緑地の一角にオープン。無料で利用できる本格的ドッグラン 施設は大阪府下でも珍しく、愛犬家らの関心を呼んでいる。
愛犬家が無料利用しボランティアで運営支援

[写真]入口で出迎える2頭の犬のモニュメントが目印
地下鉄鶴見緑地駅前エリアにお目見えした鶴見緑地パートナードッグタウン。鶴見緑地プールのすぐ南側と、立地は抜群だ。木枯らしなどまったく気にすることなく、犬たちがうれしそうに駆け回る。見守る飼い主たちにも笑顔が浮かぶ。
利用者のひとりは「うちの子と散歩するとき、いつもリード(引きひも)でつないだままですから、リードを外して自由に遊ばせられるのはありがたいですね」と話す。
運営するのは、大阪市の同エリア整備・管理運営事業者募集で選定された一般社団法人パートナードッグタウン協会。鶴見緑地パートナードッグタウンを運営するために設立された新しい団体で、施設の運営に関し、ふたつの新しい手法にトライしている。
ひとつ目の試みは非営利運営によるドッグラン施設無料利用の実現だ。柳原英次理事長は「犬を自由に 遊ばせるためには、一定のルールやマナーを守る必要がある。しかし、運営スタッフを置くと、有料になって愛犬家が利用しにくい。無料開放すると、スタッフ が常駐できないので、運営に支障が生じかねない」と、ドッグラン施設運営のもどかしい実情を報告。「営利を追求しない市民団体を新たに設立し、無料で利用 できる市民が、常駐スタッフの支援を受けながら自発的に運営できる態勢で臨んでいる」と話す。
スタッフ人件費を含めた運営費は、設立基金や企業からの賛助会員会費、個人からの寄付金でまかなう 方針。利用希望者は愛犬とともに登録する必要があるが、登録費は不要で、常時無料で利用できる。その代わり、できる範囲内で清掃などのボランティア活動を 通じて、運営をサポートしたいところだ。
保護犬と新しい飼い主の出会いの場を提供

[写真]柳原英次・一般社団法人パートナードッグタウン協会理事長
もうひとつの試みは、ドッグラン施設と保護犬譲渡施設の統合だ。柳原理事長は「ペット人気とは裏 腹に、飼い主から虐待を受けたり捨てられ、公的機関で殺処分される犬や猫が、年間18万頭におよぶ」と厳しい現実を指摘。「ペットの殺処分ゼロをめざし て、保護犬と新しい飼い主の出会いの場を提供し、犬と人間が共生できる環境づくりを進めていきたい」と、長期的展望を見据えて話す。
愛犬の運動エリアは犬のサイズによって、3つのエリアに分かれている。体は立派でも他の犬と遊ぶことに慣れていない初心者の犬は、まず小型犬のエリアへ。他の犬と一緒に遊ぶ心構えの習得からスタートできるよう配慮されている。
愛犬が遊べるエリアに隣接して、常時数頭の保護犬とふれあうことのできるエリアを併設。ふれあいを通して気になる保護犬が見つかれば、スタッフの仲介で譲渡手続きを開始することができる。
営利目的ではないので、運営の継続が当面のテーマ。初年度に2000人の会員を集め、毎月10頭程度の保護犬譲渡をおおよその目安にしていく方針だ。
駆け回るワンちゃんから元気をもらう
柳原理事長は、守口市内でペット用品販売店を経営。1990年、鶴見緑地で開催された「花の万博」でも、犬にちなんだキーホルダーを販売するなど、ペット業界ひと筋に歩んできた。
「かつて野良犬が珍しくなかった時代、多くの野良犬が殺処分を受けていましたが、一方では子どもたちが、近所で拾ってきた野良犬を、苦労しながら育てることで、いのちの大切さを学ぶことができた」と振り返る。
「いまではペットショップでかわいいペットが簡単に手に入るものの、いのちの重さを理解しないまま、ペットの虐待につながるケースが後を絶たない」と指摘。「ペット業界と市民の垣根を越えて、いのちをはぐくむ大切さを伝えていきたい」と静かに意気込む。
個人からの寄付は、ペットショップに募金箱を設置して募っていく。「愛犬家の皆さんに、ペットの殺処分をなくしたいという思いを、募金箱に入れてもらえれば」と訴える。
ペットにいやされるのは飼い主だけではない。柳原理事長は「体調を崩し、心を病んで落ち込んでい る人が、駆け回るワンちゃんを見て、生きるっていいなあと感じることもある。駅前で人通りが多いので、いろいろな人たちにワンちゃんをながめてもらうだけ でいい」と付け加える。
営業時間は午前11時~午後4時で休園日は毎週火曜日と金曜日。場所は鶴見緑地プール横。年末年始は29日から1月2日まで休み。くわしくは同協会の公式サイトで。
(文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)