私は双極性障害であるとともに、睡眠障害とレム睡眠行動障害でもある。
双極性障害は躁鬱病である。
躁機と鬱期を繰り返す障害だ。
睡眠障害は、寝つきが悪くいい睡眠が取れず、目覚めも悪いという厄介な病気である。
睡眠障害は若いころからそうだった。
両親ともそうだったので遺伝かもしれない。
両親が処方されていた睡眠薬でようやく寝付けていた。
双極性障害は、もとからそうだったのではなく、初めはうつ病になり、その後、双極性になった。
レム睡眠行動障害とは、睡眠時のレム期に、体が動く病気である。
人間は、寝るとレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す。
ノンレム睡眠時には、頭は寝ていて体は動く。
寝返りをうつのはこのノンレム睡眠時である。
レム睡眠時には、頭は目覚めているが体が動かない。
夢をみるのはこのレム睡眠時である。
「金縛り」という現象がある。
これはレム睡眠時に起きる。
頭は目覚めているので夢をみる。
疲れていたり嫌なことがあった日の夜は、嫌な夢をみることが多い。
人なよるが、そんなときに何か恐ろしい存在に襲われかかるとかという恐ろしい夢をみる。
しかし、レム睡眠時なので、頭は目覚めているが体が動かない。
夢を見ている人は、逃げようとしたりするが、体が動かないのでどうにもできず、恐怖のどん底に堕ちる。
これが「金縛り」の正体である。
レム睡眠行動障害の患者は、このレム睡眠時に、頭が目覚めているのはもちろん、体も動く。
だから恐怖の夢をみればベッドから立ち上がって逃げたりする。
私の場合、昔からどういうわけか闘う夢をよくみるので、夢の中でパンチを繰り出し、キックを放つ。
初めてその症状が出たのは、娘がまた保育園生だった40年近く前のことだ。
リングでアメリカの大男プロレスラー4人と闘った。
私は一瞬にして彼らに押しつぶされ、マットに倒されて4人に覆いかぶさられた。
身動きしようとしてもビクともしない。
目の前に、毛むくじゃらのぶっとい腕があった。
それに思い切りかぶりついた。
すると「きゃーッ」という大きな声がして、驚いた私は目を覚ました。
隣に寝ていた幼い娘が、片腕をおさえて泣いていた。
その腕を見てみると、私の歯形が付いていた。
私がかぶりついたのはアメリカ人レスラーのぶっとい腕ではなく、娘の細い腕だったのだ。
夢は一瞬の間にみるという。
長い夢でも、それは起きたときにそう思うだけで、実際は一瞬の間にみるだけらしい。
娘の細腕にかじりついたのは、たぶん隣で寝ていた娘が腕を私の口のあたりに振り落としてきたからだろう。
その一瞬に、リングで4人もの大男のアメリカ人プロレスラーと闘っておしつぶされた夢をみたのだと思う。
それから私のレム睡眠行動障害はたびたび起きた。
元妻とまだ離婚していないとき、私たちは夫婦寝室で並んで寝ていた。
狭い部屋で、本棚がたくさん並んでいて両側の壁がほぼ見えない状態になっていた。
布団は、その本棚に囲まれた間にふたつ敷いていた。
布団と本棚は接していた。
そんなある夜、私は韓国の大男のチェ・ホンマンとリングで闘う夢をみた。
チェ・ホンマンのストレート一発で私はマットに倒れた。
〈チェ・ホンマンに倒された私〉
その私にチェ・ホンマンは上から遅いかぶさろうとしてきた。
私は、やばいと思って、マットに仰向けになったままの姿勢でチェ・ホンマンの口目掛けて中足回し蹴りを放った。
「中足」(ちゅうそく)とは、足の指をそらしたその付け根である。
昔の空手には、スネや足の甲をほ当てる回し蹴りはなく、この中足回し蹴りしかなかった。
私の放った中足回し蹴りはチェ・ホンマンの口にもろに当たった。
そのとき、物凄い衝撃が私を襲った。
右足で蹴ったのだが、その右足に強烈な衝撃があったのだ。
チェ・ホンマンの歯が何本か折れ、血が私の体にしたたってきた。
それでもチェ・ホンマンは倒れず、なおも私に覆いかぶさろうとしてきた。
私は足の痛さを我慢し、二発目を放った。
それもチェ・ホンマンの口に見事に当たり、彼は咆哮してのけぞった。
同時に、足の痛みが最高潮に達し、私は目覚めた。
起き上がるとそこはただの寝室でリングではなかった。
夢だったのかと思ったが、足の痛みはまるで消えていなかった。
私はパジャマを着ていたので、右脚のスボンのほうをまくり上げてみた。
するとそのスネには、20cmほどの間隔で横に数本の傷が付き、血が滲んでいた。
私は左側の壁を塞いでいる本棚を見上げた。
本棚には文庫本が多く収めてあり、棚板はほぼ20cm間隔で設置されていた。
傷ついた自分のスネを見て、本棚の棚板を見た。
傷の間隔は、本棚の棚板の間隔とほぽ同じだった。
私は、仰向けで寝ながら、本棚に向けて中足回し蹴りを二発も放ったのだ。
また、札幌の地下鉄南北線のすすきの駅で、地下鉄テロの犯人どもと乱闘したこともある。
それ以後も、隣で寝ている元妻の尻を蹴ったり、ひとり暮らしになったら部屋のストーブを蹴って壊してしまったことがある。
離婚後に恋人と一緒に寝ることがあったが、そんなときはひどく緊張したものだ。
レム睡眠行動障害と診断されてからは抗てんかん薬を処方されているが、寝る前にそれを飲んでもレム睡眠行動障害が起こることがある。
朝起きると手や足にアザができていることがある。
レム睡眠行動障害が起きたせいだで、何かを殴ったか蹴ったためだろう。
この病気で苦しんでいる人は意外と多いような気がする。
この病気について、多くの人に知ってもらいたいと思う。
なお、レム睡眠行動障害は、将来、パーキンソンやレビー小体という変性疾患になるリスクが高いと言われている。
その点でもレム睡眠行動障害を甘く見るべきではない。
【ダイエット記録】目標達成体重より+4.6キロ。



