《2024年3月21日》ーチライのバケラッタ | aichanの双極性日記

aichanの双極性日記

千歳・札幌の季節の風景とレザークラフトとアウトドア(特にフライフィッシング)。
双極性2型で喘息で『Zensoku Web』というHP(http://zensokuweb10.starfree.jp/index.htm)、
ブログの〈Zensoku Web〉(https://aichanzw.seesaa.net/)を運営している!

福寿草はアイヌの人々の言葉でチライアポッパと言う。

 

イトウ花と訳されまる。

 

チライは絶滅危惧種になってしまったあのイトウのことである。

 

アポッパは花の意味だが、この場合、フクジュソウを指す。

 

フクジュソウの咲く早春、イトウは川を遡りはじめる。

 

ちょうど今ころの時期ではないか。

 

アイヌの人々はイトウも神の恵みとして食用にしていたので、それが遡上してくる時期には敏感だったと思う。

 

ちょうどそのころにフクジュソウが可憐な黄色い花びらを開くので、フクジュソウがイトウ漁の開始を告げる花として珍重されたのだろう。

 

イトウといえば、私は若いころにずいぶん釣りに出向いた。

 

道東の風連川(フウレンガワ)や別寒辺牛川(ベッカンベウシガワ)、道北のサロベツ川や猿払川(サルフツガワ)によく行った。

 

でも、釣れなかった。

 

幻の魚と呼ばれるだけあって、まず個体数が少ない。

 

そのうえ私の釣り技術が未熟なので、どうしても釣れなかった。

 

しかし、サロベツ川に釣行したとき、一度だけヒットさせたことがある。

 

湿原の川でルアーをキャストし、深く沈めてゆっくりゆっくり巻き取ってはキャストし…というのを何十回も繰り返していた。

 

流れのゆったりとしたドン深の川なので、川底には倒木やら何やらがたくさん沈んでいて、そんな物陰にイトウは潜んでいるので、根掛かり覚悟でそういう川底を探らないといけないのだ。

 

その日も何度も根掛かりし、何個かルアーを失った。

 

と、いきなりガクンッという大きなショックがあった。

 

でも私は「また根掛かりか…」と落胆した。

 

ロッドを通して手に伝わる感触は川底の倒木にルアーのフックが引っ掛かったように思えたのだ。

 

ところが、次の瞬間、グンッ、グンッと左右に大きくルアーを振られた。

 

「イトウだ!」と咄嗟(とっさ)に私は確信した。

 

イトウはフッキングすると左右に顔を大きく振ってハリを外そうとすることが多いと聞いていたからだ。

 

私は「ヤッター!」と内心小躍りしてロッドを構え直した。

 

そのときだった。

 

記憶では、目の前がパアーーーッと発光した。

 

川面で爆発が起きたかのように大きな白い水しぶきが川の中央で吹き上がったのだ。

 

呆然としてロッドを構えた私は確かに見た。

 

その水しぶきの中央で頭を上にして体半分を水面から飛び出させた巨大な魚体を!

 

秋サケよりもはるかに大きな頭だったので、体長は1メートル前後はあったと思う。

 

そして次の瞬間、巨大な頭は水中に没してまた巨大な水しぶきが上がり、「あっ」と気付いたときにはロッドに伝わっていた重々しさが完全に消えてしまっていた。

 

ロッドの先端から水中に伸びているラインは弛んでいて、魚がフックを外したことがわかった。

 

私は巨大イトウの出現に唖然としてしまい、まずロッドを大きくあおって確実にフッキングさせることを忘れ(サケ科の大きな魚の口の中は堅いのでヒットしたら即座に強くフッキングさせないとバレやすい)、それだけでなく、ヒットした後の絶対タブーであるライン緩めをしてしまったのだ。

 

ラインが緩むと魚は顔を振ったりジャンプしたりしてうまくフックを外すからである。

 

だからヒットしたらロッドを後方に持ち上げるようにして素早く引き、そのままでリールをすぐ巻き、ラインをピンッと張ったままファイトに移らなければいけないのに、愚かな私はそれらの大事なことをスッポリ忘れてイトウのデカ頭に見とれてしまったわけだ。

 

その後は心身ともに弛緩して、しばらくは湿原の草の上に尻餅をついたまま惚けていた。

 

ようやく力が戻ってきて、さてもう少し頑張るかと立ち上がって赤いルアーをキャストして巻き上げていたときだ。

 

川底から伸びて岸辺近くの水面に顔を出していた細い枝にルアーを引っ掛けてしまった。

 

ルアーを失わないように慎重にロッドを操作して外そうと何分か苦闘した。

 

すると、水底深くほんのり紅色に見えてユラユラ揺れるルアーの少し沖で、ユラリと何かが動いたのだ。

 

「………」

 

と私は固唾を飲んでその物体に目を凝らした。

 

それはほぼ真ん丸の大きな顔のようで、それが何かの顔である証拠に小さいけど明らかに2つの目がある。

 

(なんだ?)

 

と私はしばらく見詰めた。

 

魚だったら正面から見ると真ん丸ではないと思っていた私は、それが魚とは思えず、野生化したミンクか何かかとも思った。

 

試しにロッドを小刻みに振って赤いルアーをヒラヒラと動かしてみた。

 

すると、真ん丸顔はスー…と前進してきてそのルアーに喰い付こうとしたのだ。

 

左右のエラのあたりのヒレを動かしてデカイ口を開けて。

 

「イトウだ!」

 

とここで私はやっとその真ん丸顔がイトウであることに気付いた。

 

さっきバラしたやつかどうかはわからなかったが、とにかく目の前にイトウがいるわけである。

 

何年も追い求めていたイトウがそこにいるのだ!

 

私は興奮を必死に鎮めながらそれから数分、何とかイトウをルアーに喰い付かせようと努力した。

 

ルアーが水中の枝に引っ掛かっているので、イトウをフッキングさせても枝とイトウとラインがぐちゃぐちゃになってバレる恐れが大だったが、根掛かりしたルアーを外しているうちにイトウがいなくなってしまいそうに思えて、一か八かの賭けに出るしかなかった。

 

しかし、力んでしまってロッドを大きく動かしたのが失敗だった。

 

イトウは前面に見える黒いものが人(動物)だと認識したらしく、スー…と後退していったのだ。

 

イトウがいた場所は、川底の泥が舞い上がって煙幕になり、何も見えなくなった。

 

その十数年後、どこかの水族館に子どもたちを連れていったとき、サケ科の魚のコーナーがあり、イトウもたくさんいた。

 

私はじっくりと彼らを観察し、にらめっこして「なるほど…」と納得した。

 

彼らの顔は本当に丸いのだ。

 

顔だけでなく、胴体が全体に丸い。

 

〈イトウ〉

 

普通の魚は胴体が薄くなっているものだが、イトウはそうではないのだ。
確かボラもそんな体をしている。

 

子どものころ海岸でボラを釣ったら、その顔が真ん丸で、しかも口がへの字で、そのころテレビでやっていた『オバQ』に出てくる外国オバケのバケラッタ(そんな名前だったと思うけど違うかも)の顔にそっくりで笑いが止まらなくなったことを覚えている。

 

「チライのバケラッタ」って何のことだとワケのわからなかった方が多かったと思う。

 

そういう意味なのであった。

 

バカっぽいタイトル付けてすみません。

 

それはさておき、何でイトウという名なんだ?

 

調べてみると、糸魚(イトウオ)がイトウになったらしい。

 

イトウが糸のように細長いとは到底思えないが、普通の魚のように縦に平たくはなく丸いので、それで糸魚と呼ばれていたのかもしれない。

 

ところで、スズキという魚もいるぞ。

 

でもサトウはいない…。

 

スズキの名の由来をご存じの方はぜひ教えてください。

 

 

【ダイエット記録】「0.2キロ増えた。あと0.7キロだ」のまま。