源氏物語イラスト訳【紅葉賀160】人びとも
人びとも、「思ひのほかなることかな」と、扱ふめるを、頭中将、聞きつけて、「至らぬ隈なき心にて、まだ思ひ寄らざりけるよ」と思ふに、
【これまでのあらすじ】
桐壺帝の第二皇子として生まれた光源氏でしたが、源氏姓を賜り、臣下に降ります。亡き母の面影を追い求め、恋に渇望した光源氏は、父帝の妃である藤壺宮と不義密通に及び、懐妊させてしまいます。
光源氏18歳冬。藤壺宮は、光源氏との不義密通の御子を出産しました。源氏は宮中の女官に手を出すこともなかったのですが、年増の源典侍(げんのないしのすけ)には少し興味を持って、ちょっかいを出しています。
源氏物語イラスト訳
人びとも、「思ひのほかなることかな」と、扱ふめるを、
訳)女房たちも、「意外なことだなぁ」と、うわさするようなのを、
頭中将、聞きつけて、
訳)頭中将が聞きつけて、
「至らぬ隈なき心にて、まだ思ひ寄らざりけるよ」と思ふに、
訳)「(源氏のことは)至らない物陰もないほど知っているはずの私の心においても、まだ思いも寄らなかったよ」と思うと、
【古文】
人びとも、「思ひのほかなることかな」と、扱ふめるを、頭中将、聞きつけて、「至らぬ隈なき心にて、まだ思ひ寄らざりけるよ」と思ふに、
【訳】
女房たちも、「意外なことだなぁ」と、うわさするようなのを、頭中将が聞きつけて、「(源氏のことは)至らない物陰もないほど知っているはずの私の心においても、まだ思いも寄らなかったよ」と思うと、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
■【人びと】…女房達
■【も】…強意の係助詞
■【思ひのほかなり】…思いがけない。意外だ
■【かな】…詠嘆の終助詞
■【と】…引用の格助詞
■【扱(あつか)ふ】…うわさする。もてあます
■【める】…推定の助動詞「めり」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【頭中将(とうのちゅうじょう)】…光源氏の義兄。葵上の兄
■【聞きつけ】…カ行下二段動詞「聞きつく」連用形
■【て】…単純接続の接続助詞
■【至(いた)ら】…ラ行四段動詞「いたる」未然形
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【隈(くま)なき】…ク活用形容詞「くまなし」連体形
※【くまなし】…かげりがない。抜け目がない
■【心】…頭中将の心
■【にて】…手段の格助詞
■【まだ】…いまだ
■【思ひ寄ら】…ラ行四段動詞「おもひよる」未然形
■【ざり】…打消の助動詞「ず」連用形
■【ける】…詠嘆の助動詞「けり」連体形
■【よ】…詠嘆の間投助詞
■【と】…引用の格助詞
■【思ふ】…ハ行四段動詞「思ふ」連体形
■【に】…順接の接続助詞
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みなさんは、物語をつくろうと思ったこと、ありますか?
わたしは、作りたい! とは思うんですが、いかんせん、イマジネーションに乏しくて……。
目下、源氏物語にてインプット中でございます;;
物語を創作するときに必要なものとして、
〈人物設定〉
がありますよね。
もちろん、主人公のキャラクターは重要ですが、
脇役の存在も、物語の流れに、大きく左右します。
今回の頭中将は、『源氏物語」において、けっこういい味のスパイスになっていると思いませんか!?
光源氏のライバル的存在である彼は、
源氏が、誰や彼やにちょっかいを出す、色恋沙汰の場面で、うわさを聞きつけて、よく登場します。
以前の、末摘花のときも、そうでしたよね。
ヒロインの女性が、藤壺宮や六条御息所など、鉄板キャラの場合は、
「もうっ! 誰も入りこまないでぇ~!」
と、源氏と彼女の2人の世界に没入できるんですけど、
今回の「源典侍(げんのないすのすけ)」や、「末摘花(すえつむはな)」などの、ポンコツキャラの場合、こういう頭中将のような第三者が出てきてかき回してくれたほうが、飽きずに読んでいけそうです。
たとえば、名探偵コナンでいうと、
服部平次くん、みたいな。
頭中将が出てくると、話が面白い方向に展開していきそうです。
YouTubeにもちょっとずつ「イラスト訳」の動画をあげています。
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