2017/3/11河北新報 <もう一度会いたい>
何で先に逝ったんだ涙で目が曇らなかった日を思い出せない。
(※記事内の名前は仮名です)
宮城県石巻市の小野寺さん(53)は
震災で長女=当時(18)、次女=同(16)、
長男=同(12)を亡くした。
人生これからという時に世を去った不遇を哀れむ。
子を守れなかった無力を恥じる。頬がぬれる。
子のいなくなった人生を送る意味を見いだせない。
「死にたい」夫がそう口走っていたのを
妻(45)は何度か耳にしている。
針岡橋に足が向く。欄干からのぞき込む。
津波の遡上で川が氾濫し命を奪った。引き込まれそうだ。
身を投げる衝動に駆られる。
■男のくせに
震災遺族として中国地方に講演に行く機会があった。
広島の原爆ドームに寄る。
長男が小5の学習発表会で
「はだしのゲン」のゲンの弟を
演じた記憶がよみがえり
目頭が熱くなった。
涙は枯れることを知らない。
泣きはらし、泣き疲れ、
泣き明かしても尽きずにこみ上げる。
不意に涙ぐむことがある。
スーパーで買い物をしている時とか。
髪を切っている時とか。
子とは無関係の何の脈絡のない状況でウッとくる。
妻からは「男のくせに」と言われる。
多分、お前より心(しん)が弱い。
泣いてばかりいる。
遺品を手にしても。
子と遊んだ公園を通り掛かっても。
いわさきちひろの絵を眺めても。
テレビの「はじめてのおつかい」を見ても。
何で親より先に逝ったんだ?
死ぬ順番を変えては駄目だ。