より抜粋

そもそもカルテは患者に開示することを目的として
作成される書面ではありませんから、
医師は率直にその時の印象や意見、医学的知見を記載できます。

カルテの開示を原則とするのであれば、
医師は委縮し、率直な記載を省略することになりかねません。

また、病状の悪い患者がカルテの記載を見ることで、
治癒に悪影響がある可能性もあります。

そのような考え方から、
カルテの開示には医師や医療機関側の根強い抵抗がありました。

カルテ開示に大きな影響を与えたのは、
2003年5月の個人情報保護法の施行と、
厚生労働省による「診療情報の提供等に関する指針」の制定です。

個人情報保護法28条1項は、
「本人は、個人情報取扱事業者に対し、
当該本人が識別される保有個人データの開示を請求することができる。」

と定め、原則として個人情報取扱事業者にカルテの開示義務を認めました。

また、2017年5月30日から、小規模事業者の除外規定も撤廃されました。

これにより民間の医療機関は、
原則としてカルテの開示義務を負うこととされました。


また厚生労働省は「診療情報の提供等に関する指針」を制定し、
「診療記録の開示に関する原則」として、
「医療従事者等は、患者等が患者の診療記録の開示を求めた場合には、
原則としてこれに応じなければならない。」
と定めています。

あくまでガイドラインですが、
医療従事者がカルテを開示することを原則とすべきとするもので、
医師のカルテ開示の姿勢に大きな影響を与えました。