より抜粋

アメリカでは20世紀前半から、
大衆消費社会化が進行しつつあった。

その新しい資本主義社会の在り方は、
フォーディズムと後に呼ばれるようになるものだが、
この名称は自動車会社のフォード社に由来する。

フォード社が行なったのは、一種の発想の転換だった。

労働者を低賃金で搾れるだけ搾ることによって利潤を上げるのではなく、
勤労者大衆に購買力を与えることによって利潤を上げる、
という考え方を導入したのだった。

具体的には、徹底的な合理化によって商品を低廉化することと、
労働者に対して比較的高い賃金を払うことを同時に行なった。

感覚的に言えば、かの有名なT型フォードを生産する工員たちに、
自分たちのつくっている商品を買える程度の賃金を払うこととしたのである。

このフォード社が先鞭をつけた発想の転換は、
戦後の先進資本主義諸国に大衆消費社会をもたらした。

労働者階級が購買力を獲得して
中流階級へと移行することで階級格差が縮小する一方、
消費財の大量生産・大量消費に依拠する経済成長により、
資本の側も利潤を伸ばすことができた。



 

また、資本主義社会主義
東西対立の文脈も重要だった。

勤労者が主役の平等な国
を少なくとも建て前として掲げる国々が
一大勢力となったという状況下では、
資本主義の国家であっても、
平等を真剣に追求しないわけにはいかなかったのである。

(中略)

また、フォーディズムと同時に導入されたのは、
テイラー主義だった。

テイラー主義は、工学者のフレデリック・テイラーに因むが、
テイラーは科学的管理法の提唱者であり、
工場労働者の身体の動きを「科学的に管理する」必要性を訴えた。

要するにこれは、

工場で作動する機械の動きに労働者は一体化せよ、
との要求である。

テイラーは説く、
確かに身体動作の科学的管理は労働者に苦痛をもたらすが、
その見返りはあるのだ、と。

見返りとは高賃金であるが、
マルクスの用語に置き換えて言えば、
生産性の向上によって相対的剰余価値が増大し、
その一部が労働者にも分配される、ということである。

 

【コメント】

 

今の日本は、正社員と派遣社員との「不平等」があり、

「低賃金」による、労働者の「購買力の低下」によって

「経済の停滞」が起きているのです。