より抜粋
人生は決断の連続である。
どのように選択すればいいのだろうか。
寓話は先人が残してくれた人類の貴重な遺産であり、
そこにはよく生きるための「教え」が凝縮されており、
「人生の道しるべ」になる。
◆決断しない損
ロバは、左の道の先と右の道の先に干し草を見つけた。
ほぼ同じ距離、ほぼ同じ量の干し草が置かれている。
どちらの干し草も美味しそうだ。
「どちらの干し草を食べるのがいいだろうか?」
ロバは迷った。
左に二、三歩行くと、
右のほうが良さそうに思えてくる。
右に二、三歩行くと、
左のほうが良さそうに思えてくる。
そんなことを続けているうちに、
ロバはとうとう餓死してしまった。
■選択できずにその場を動かない危険性
フランス中世の哲学者である
ジャン・ビュリダンが作った話とされている。
ただし、出典は明らかではない。
どうしてロバはその場を動かなかったのだろうか。
それはロバの前に「選択の壁」が立ち塞がったからだ。
では、ロバはその壁をなぜ突き破れなかったか。
二つの理由が考えられる。
一つ目は左右どちらかを選ぶための
「明確な理由」が見つからなかったことだ。
干し草までの距離も、その量と美味しさも
同じように見えたのだろう。
二つ目は「選択を誤ってしまうかもしれない」
という恐れが生じてきたことである。
どちらか一方を選んで行動に移してみたものの、
「こっちよりもあっちのほうが良かったのでは?」
という後悔の念が沸き起こることを恐れたのだ。
「選択の壁」を前にしたロバは動くことができず、
その場に立ち尽くすしかなかった。
この寓話は、何かを選択することの難しさと同時に、
「何も選択できず」に
その場で立ち尽くしてしまう危険性を教えてくれる。
人は人生の節目節目で大きな選択を迫られる。
そういう場合、
その場を動かないほうが良いというケースはあまり多くは…ない。