新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、
先端技術を総動員した対策が世界で進んでいる。
 
日本は2021年の運用開始をめざしていた
スーパーコンピューター「富岳(ふがく)」を前倒しして投入。
 
米国は官民連携でスパコンや人工知能(AI)を活用する体制を敷く。
治療薬開発などを加速し、ウイルスの封じ込めにつなげる狙いだ。
 
現在、世界が待ち望んでいるのが新型コロナに効く治療薬だ。

 

 抗インフルエンザ薬「アビガン」などが期待されるが、
 効果が見通しにくい面もある。

 
根本的な治療薬の開発などに向け、
文部科学省と理化学研究所は従来計画を前倒しして富岳を活用することを決めた。
 
 富岳
 
富岳はかつて計算速度で世界一を誇ったスパコン「京(けい)」の後継機。
 
 官民合わせて1300億円を投じ日本の威信をかけて開発してきた。
 現在、神戸市の理研の拠点への搬入・設置を進めている。
 
 まだ稼働できるのは全体の6分の1ほどだが、すでに京の8倍の計算性能をもち、
 戦力として期待できるという。

 
スパコンを使ったシミュレーションは新薬開発には欠かせない有力な武器だ。

 

 京都大学教授でもある理研の奥野恭史副プログラムディレクターは富岳を使い、
 新型コロナの治療薬候補の探索に挑む。
  
 既存治療薬を使った臨床試験が世界で進んでいるが、
 まだ科学的な知見は十分ではない。

 
富岳では、薬がウイルスに作用する詳細なメカニズムを分子レベルで調べる。
 
 臨床試験の対象となっている薬に限定せず、
 約2000種類に及ぶ既存医薬品の中から治療薬候補を見つけるのが目標だ。
 
 既存薬を超える新薬開発にも貢献できる可能性があり
 「1カ月程度で何らかの成果は出したい」と奥野氏は力を込める。

 
 
 
米国はいち早くスパコンの活用に動いた。

 

 ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)が中心となり、
 3月下旬に産官学のコンソーシアムを結成した。

 
現在、世界最速を誇るIBMの「サミット」など30台に及ぶスパコンを動員している。
 
 
 
AIも積極活用する。


 OSTPやマイクロソフト、ジョージタウン大学などの連携により、
 新型コロナに関する膨大な論文データを集める。


AIを使い治療法の開発などに役立つ知見を見つけ出す取り組みを進める。
 
 この活動には世界の10万人以上のデータサイエンティストらが
 コンペなどで腕を競う米アルファベット傘下の
 プラットフォーム「Kaggle(カグル)」も参加し、
 「市民データサイエンティスト」も巻き込んだ取り組みになっている。