コーチングでもう一度傷つくということ-ディープデモクラシーと私- | ワタシ的コーチングのどうでもいい話

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コーチングっていったい何するの?コーチングすると何が起こるの?のほんの一例。

コーチングでは、癒されたり希望を得たりすること以外に、苦しみ、傷つく一面があります。このことをコーチとして、きちんとお伝えしたいと思っていました。それは、人生において、喜怒哀楽がいろいろ織り交ぜて現れるのと同じように、自然でありふれたことだと思っています。

今日は、システムコーチングの対面勉強会で、私自身が自分の課題に向き合い、もう一度傷ついた話をご紹介します。

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システムコーチングの対面勉強会。その日は、あまり接点のなかったORSCERたちが集まりました。
私は、まさに今自分のシステムに大きな課題を抱えていて、その課題に向き合いたいと申し出たところ、メンバーは快く引き受けてくれました。

☆見立て
複数の人数からなるグループを対象とするシステムコーチングでは、コーチングに取り組む前に、まず見立てを行います。
今回は以下のようなことを洗い出して行きました。

①そのシステムの定義・目的(例:A会社の部署B)
②システムの主な構成要素(例:部長、中堅社員A、新卒B)
③システムの課題・起きていること(例:人間関係がギクシャクしている)
④その課題における構成要素の関係(例:部長が感情的でAを毛嫌いしている、中堅社員Aは無関心で部署のかかわりに消極的)

実際に持ち込んだ自分のシステムの詳細についてここに書くことはできませんが、一番注目すべきは、このシステムの中で苦悩しているDさんという存在でした。

私は当事者として思いつくままをつらつらと説明していきましたが、私自身が混乱しており、たくさんのことが一度に起こっていたり、要素が複雑に絡み合ったりしていて、勉強会参加者は何を課題として取り扱うか、何を目的としてコーチングを行うかについて、頭を悩ませました。

悩んだ挙句、今回は以下の方針でコーチングを進めることになりました。
①目的は、今、システムで起きていることの現状の把握・理解
②使用するツールは、ディープデモクラシー

☆導入
今回は対面勉強会ですから、私以外に、私の本来のシステムに属している人はいません。そこで、勉強会の参加者がその役割をロールプレイングとして行いました。私は、あたかも自分のシステムのメンバーがそこにいるかのように、自分自身として参加しました。

コーチ役の2名が簡単な打ち合わせをしたあと、通常のシステムコーチングと同じ段取りを踏んでコーチングを進めました。コーチはコーチングを行う意味と、コーチングツールに取り組むための教育、そして、安心して参加できる場つくりを丁寧に行いました。

-今日は、今このシステムで起きていることについて理解し、現状を把握するために、ディープデモクラシーというツールを使ってコーチングを行いたいと思います。

-これは、このシステムの中にあるさまざまな要素になってみて、そこから声をだしてみるというワークです。ご自身の視点から離れて、ほかの要素になりきって、意見ではなく、単に感じたことを声に出してみるのがポイントです。

-なお、要素は実際に存在する人とは限りません。この場にはいない人、例えば、過去に存在した人や、社会通念や文化、象徴などの人間ではない存在でもOKです。

-発言に良い悪いはありません。評価判断はせずに、感じたことをそのまま出してください。また、ほかの方の発言についても、システムの声であり、その人の意見ではないということを理解してください。

☆ワーク
ディープデモクラシーは別名、憑依のワーク。スタートは自分自身からはじまります。私、そしてAさん、Bさん・・・という私のシステムの要素の役を引き受けてくれたメンバーがそれぞれの立場から発言を行います。

そのあと、システムのメンバーはそれぞれの要素を交換したり、新たな要素に立って、感じていることを声に出していきます。

私はすぐに'私'という要素から離れて、別の要素にたちました。
ほかの誰かが、入れ替わるように'私'の場所に立ちました。
そのとき、システムの中で悩み、苦しむDさん、とそれを励ます'私'の姿が見えました。

-大丈夫、大丈夫だから!まあ、なんとかなるよ!

無神経にへらへらと笑いながらDさんの肩を叩く'私'の姿。ほかの要素になっていた自分の中には、'私'に対する腹立たしさがこみ上げてきました。

-いやあ、Dさんなら大丈夫ですよ!

私は今度は'Eさん'になりかわって声をだします。ほかのメンバーもAさんも、Bさんも、Cさんに入り込み、みんながDさんに声をかけます。苦悩するDさんの背中はますます小さくなっていき、場の圧力に押しやられ、部屋の外へ逃げようとしていました。

勉強会の参加者が、かわるがわる要素を交代して演じるロールプレイングでありながら、そこから現れる姿はなんと生々しいことか。

さまざまな要素から、たくさんのシステムの声が拾えたと感じた時点で、ワークは終了となりました。

☆コーチングのあとに起きたこと
ワークの後の振り返り、私は、私の中で何かが起きつつあるのを感じながら、それをうまく言葉にすることができませんでした。状況がより明確に見えてきたことは間違いありませんでした。

参加者の一人から、「今日体験したことを生かして、次は何ができますか」と問われたとき、私は言葉が詰まりました。それは、とても苦しい問いでした。ワークはとてもうまく機能したように見え、これまで気がつかなかったシステムの声を聞き、これまで見えてこなかったシステムの姿を見ました。システムの現状がより明らかになった一方で、どうすればよいのかはまったく見えませんでした。私は途方にくれていました。

対面勉強会のあとで、私はしばらくこのときの体験を繰り返し思い出しながら、苦悩する日々をすごしていました。その数日後、悶々とした中で、実際のこのシステムの中で話し合う機会が訪れ、苦しい胸中を言葉にしてくれた人がいました。私はその時にようやく救われた気がしました。

システムの苦悩はシステムにこそ癒す力がある、と実感した出来事でした。

-Fin-