去年の桜花賞は3戦3勝の桜花賞馬となった
” デアリングタクト ”
戦後でいえば初のことである
凄い快挙には違いない
しかし同じ3戦目で桜花賞馬となった馬がいる
いま少し時を戻そう
1979年 ー 夏 ー
凄い快速馬が出てきた~
新馬戦1000mを57,2秒で後続を
10馬身以上突き放して勝利したのである
日本レコード、いまもなお破られていない
その馬の名は
” ハギノトップレディ ”
華麗なる一族のお嬢さまである
そのニュースを聞いた時
私は興奮したのを覚えている
その時計の速さは衝撃的なものである
またそれを増幅させたのが
その名前
ハギノトップレディ
この名前の響きである
そしてこの一族の経歴が華麗すぎて
より一層、引き立たせる
母親はイットー
名付け親は歌舞伎の尾上菊五郎である
「一刀両断」から命名された
デビュー戦はぶっちぎりで勝ち
3歳優駿牝馬に選ばれる
そして桜花賞の前哨戦をまたもや
ぶっちぎりで勝利するもアクシデントで
桜花賞とオークスが出走できなかった
古馬になっても牡馬と互角に戦って
そのスピードに陰りはない馬だった
その仔馬がハギノトップレディである
ハギノトップレディは桜花賞に出るために
指定レースに出走するもギリギリの3着
この時私は噂を確認するために観に行ったが
ガッカリしたのを覚えてる
そして3戦目で桜花賞に出走したのである
桜満開の阪神競馬場、スタートした
スタートをしてすぐに速い、速い、速い
どんどん突き放していく
観客はその速さにどよめいている
直線に入っても影を踏ませずゴールインした
華麗なる一族のクラッシック制覇である
応援した甲斐があった
そして迎えたオークスである
距離は2400mと伸びる
初めてのことばかりである
この当時は東西の対決が凄くて
出走前から異様な雰囲気に包まれ
空模様も暗い馬場も不良であった
私もお嬢さまに勝って欲しかったが
惨敗する予感がしていた
そしていよいよスタートの時を迎えた
ファンファーレが鳴る
スタートした!
速い!速い!速い
目を見張る速さである
1角を周り2角も先頭で周るところで
執拗に絡まれるのである
TV馬である
この当時はTVの放送に映らない馬なんかは
映るために玉砕で飛ばしてくるのだ
いわゆる関西馬の
ハギノトップレディ潰しである
向こう正面でその馬を振り切り
また先頭に立つ
3角を周ったところでまた次の
玉砕馬が出てきた
また玉砕馬を振り切る
そして4角を周り先頭で直線に入る
しかしお嬢さまにはもう体力がなかった
つぎつぎに後続馬に抜かれていく
17着に大敗する
悔しい気持ちがいっぱいだった
優勝は岡部騎手のケイキロク
強い勝ち方だった
お嬢さまには距離の壁があるといわれた
ただのスピード馬でマイルまでだろうと
酷評された
夏場は休養にあて、立て直しをはかる
そして10月に復帰
初戦を9馬身差でぶっちぎりで勝つ
2戦目も2馬身半差をつけて影を踏まさない
迎えたエリザベス女王杯2400mである
さすがG1で豪華メンバーである
オークス馬のケイキロクも出ている
ハギノトップレディは2連勝しているのに
3番人気である
距離の壁だろう
そしてレースは始まった
ハギノトップレディが逃げる
問題は距離だ
「ガンバレよ~!」
私は京都競馬場で声援に紛れて叫ぶ
そして勝負の直線に
「そのまま行け~」
そこにはオークスのお嬢さまではなかった
「ハギノトップレディ~!ゴールイン!!」
見事に二の足を使い逃げ切ったのである
私はハギノトップレディの単勝を握りしめていた
その年、最優秀牝馬に選ばれたのである