なんと静かで美しいのでしょう。
これが、日本の所作ですね。
大和楽の長谷川浩子先生にお声をかけて頂き、
八芳園 白鳳館にて開催されたパーティーの
大切なお客様をお迎えするお役を務めさせて 頂きましたお陰で、
様々な学びを頂戴しました。その中のひとつ。
感動したのが、当日
長唄 の演奏をなさる和楽の皆様の美しさ。
演奏の感動は、言うまでもないのですが。
お客様をお迎えしてから、控え室で食事を頂きましたおり、
小鼓の方がお着替えにいらっしゃいました。
控え室が同じだったのです。
はじめ、洋服で入ってこられたときは、 モデルさんかしら?と思うほど、 エレガントで、かっこいいその方たちが
私の隣においてあったトランクを取りながら、
「 お食事中、大変失礼致します。 恐れ入りますが、こちらで着替えをさせて頂きます。」 と、静かに仰って
そのまま、そこでお着替えをはじめられたのです。
きっと舞台人は、与えられた場所で 何処でもサッとお着替えをなさるから、
自然なことだったのでしょう。
広いお部屋とはいえ
さすがに私は、はじめは少し驚いたのですが、
すぐに、気にならなくなりました。
三人のその方々は、控えている舞台の注意点など
お互いに静かに丁寧に美しい言葉で確認しあいながら、
私どもにそれぞれの場所で背中を向けて
肩に紋付きの着物をはらりと掛けられて、その後、
本当に静かに、静かに、
けれど、無駄な動きひとつなく、流れるように、
でも、
絹づれの音さえほとんど立てず
空気を乱すことなく、
あっと言う間に、
黒の紋付袴の凛々しいお姿にお着替えになりました。
そうして、
「失礼致しました。
どうぞよろしくお願い致します。」
と、深々とお辞儀とご挨拶の後
歩く音もドアを閉める音もさせないで、
お部屋から出ていかれました。
この後、本番のお姿を拝見させて頂き、演奏をお聴きし
息を合わせ、間合いをとり
背筋をピンと伸ばし、一点を見つめながら、演奏なさる
そのお姿と、和楽の美しさに
成る程、流石
と、感嘆致しました。
美しさは、間合い 呼吸
日常の生き方、所作が
そのまま なのですね。

