教室に入って、2度目の話し方教室の発表会が巡ってきました。
この時、河本先生から、
司会をしませんかとお声をかけて頂きました。
短大を卒業してから5年間、
私は自宅でピアノとオルガンの講師をしておりました。
5年目の生徒数は、約65名。
友人たちに手伝ってもらいながら、毎年、その教室の
発表会を自分で開催して、司会も自分でやっておりました。
生徒さんにもご家族の皆さんにも、とても喜んで頂いて
和やかに晴れやかに過ごせていた発表会。
だから、 それなりに自分では 出来ると思ったのです。
しかも、教室に通い始めた、いえ、見学に初めて伺ったあの日から、
私のスピーチに、
河本先生は いつも褒め言葉をくださっていたのです。
だから、 少し、自信があったのです。
お引き受けしましたら、河本先生が
司会の練習は、森先生が直接、個人レッスンしてくださるから
と、お伝えくださって、
なんて幸せなのでしょうと 喜びました。
教室の時間に、私だけ別室で、個人レッスン。
しかも、この世にこんなに優しく美しい方がいらっしゃるのかと
感動感謝の憧れの森恭子先生。
私は、ドキドキワクワクで、
個人レッスンのお部屋の扉をあけました。
中にいらっしゃった森先生は、挨拶の後、すぐに
一枚の原稿を手渡しながら、ひと言。
「発表会の司会原稿です。はい、語って。」
(語って)の言葉に少し戸惑いながら、手渡された原稿を読みました。
「みなさま、こんにちは。」
この後に、本日はようこそお越しくださいました・・と
続いてはいたのです。 もちろん。
でも・・みなさま、こんにちは。 と、ここまで読んだ途端に、
「暗い!」 と、 厳しい声が森先生から。
「読むのじゃない。語って、と言ったでしょう!」
語る?語る?語るって?
と、思いながら、恐る恐る 「みなさま、こんにちは・・。」
すぐにきつい声で、「暗いのよ!」
何度読んでも、「暗い!暗い!」
「もう一度!」 「暗い!」 「暗い!」
暗い!としか言ってもらえなくて、
どうしたらいいかわからないまま、
怖くて、泣きそうになって、どんどん暗くなる・・。
初めての個人レッスン。
たった一言の
( みなさま、こんにちは。 )だけを1時間、言い続け、
先生から頂いたのは、暗い! という言葉のみ。
そして、時間がきて、
約一か月後の発表会まで、しっかり自分で練習してきなさい。と
言い渡されて終わりました。
( 続く )