『明るく美しい言葉をいつまでも』
今回は、私に言葉の美しさを教えて下さった奥様のお話です。
(お変わりなくお元気なご様子、何よりと嬉しく存じております。
私の写真をと おっしゃって下さいまして、私、ハッと気がつきましたの。
未だ一度もお互いにお逢いしたことございませんものね。)
約8年前、私が頂いた手紙の一部です。
送り主は、私の恩師 山本英一先生の奥様 和様です。
和様から初めてお手紙を頂いたのは、この手紙の更に10年程前。
お亡くなりになった英一先生の代わりに、私の手紙にお返事を下さったのが始まりでした。
なんて美しい言葉なんだろう。
なんて美しい文字なんだろう。
そして、なんてあたたかなお手紙なんだろうと、感動いたしました。
以来、折にふれ、お送り下さったお手紙は、いつも優しく、いつも美しく。
そして、前述のお手紙。
英一先生がお亡くなりになった後も、高槻でずっとおひとりで暮していらっしゃった和様が、
息子さんのいらっしゃる横浜に引越されるとお聞きし、
お写真をとお願いした手紙へのお返事です。
お写真には、和様のお暮しぶりが伺える、きちんとしたご自宅の風景や
お仲間に囲まれ、背筋をピンと伸ばし、にこやかに笑っていらっしゃるお姿が写っていました。
そして私は、お顔と一緒に初めて和様のお年を知りました。89歳でした。
当時、私には88歳の祖母がおりました。
祖母は70歳を過ぎた頃に認知症となり、
その祖母の世話をする両親の姿を長年見ていた私は、年をとることに恐怖感を持っていました。
でも、和様のお年を知り、年を重ねることが楽しみになりました。
その後、お電話でお話しする機会を得、
和様が大学教授だった英一先生と結婚なさったのは65歳の時で、
それまでは戦争未亡人となった戦中から戦後と、
女手ひとつで息子さんをお育てになったことを、朗らかに話して下さいました。
和様のように、どんな時も、明るく美しい言葉をなくさずに、素敵に年を重ねたいと思います。