『人を伸ばし、人を潰す言葉。 だからこそ大切に』
「 (あなたの発音は素晴らしい。
こんなきれいに発音ができる日本人に出会ったのは初めてです)
と、 学生時代、初めて受けた授業で、
中国語の先生が言ってくださったんです。
ものすごく嬉しかった。
誰かに認めてもらえたの、私、初めてだったんです。
それまで、ずっと私は、自分に自信がありませんでした。
私には何もない、何もできない、と思って生きていたんです。 」
ある研修で担当したSさんは、そこまで話すと言葉を詰まらせました。
彼女の澄んだ大きな瞳に涙がすっと浮かびました。
それから一呼吸して、
「でも、きれいと誉めてもらって、
私にもできることがあると思えたんです。
頑張ろうと思いました。 」
その後、彼女は猛勉強して中国語の弁論大会にも出場。
一位を獲得し、中国政府からの奨学金で北京の大学に留学。
「今後は、留学体験で学んだことを活かし、
大好きな中国と日本の架け橋になれる仕事をしていきたい。」
と、爽やかな笑顔で、真摯に夢を語ってくださいました。
別の研修で担当したTさんは、
長いまつ毛、切れ長の大きなとび色の瞳、白い肌にバラ色の唇、
すっと通った鼻筋、風になびくサラサラの髪、華奢な骨格
女性から見てもため息が出るほどの美しい女性です。
しかし彼女は、30歳を過ぎた今も仕事に就けず、
自分の存在価値さえ見付けられずに苦しんでいます。
原因は、彼女が物心ついた頃からずっと
彼女と母親に浴びせられた
「女なんかいらんかった。息子が欲しかったんや。」
という父親からの言葉。
彼女は、女で生まれてきた自分を責めながら大きくなったと言います。
父親に認めてもらいたくて、毎日父親のキャッチボールに付き合い、
柔道に通い、 そして… 彼女は心を病みました。
人を認め、伸ばし育てる言葉。
人を否定し、傷付け潰す言葉。
私が、今の私になれたのも、
「あなたならできるわ。 期待しているわよ。」
の言葉を先生から頂いたお蔭です。
自分の口から出す言葉は、いつも人を大切にする言葉でありたいです。