『心に寄り添い、ただ話を聴くことの大切さ』
誰かの心に寄り添ったり、受け止めたい時、繋がっていたい時は、
何よりも相手の言葉を聴くことです。
相手の話を否定したり無視したりしないで、バカにしないで、
何故?と 追い詰める様に尋問しないで、
自分の価値感を押し付けたり、 話を取ってしまったり、
諭したり アドバイスしようとしないで、
うなずいて、あいづち打って、相手の言葉を繰り返し、
ただ心を込めて聴くことです。
私の祖母は認知症がひどく、亡くなる前の約2年半
特別養護老人ホームのお世話になりました。
長年の祖父母の介護で体も心も悪くした両親に替わり、
毎週一日二日 私と子ども達が訪ねておりました。
ある日、私が部屋を訪ねると、
祖母がベッドの上に座ってしくしくと泣いていました。
伺った時にスタッフの方から、
(2日続けてベッドから落ちた) と聞いた祖母の顔は
額から右目、鼻頭にかけて、青紫色に腫れ上がり、
右目は塞がり、左目も見えにくいようで、
体中にアザができていました。
胸が潰れる思いで、
「おばあちゃん、大丈夫?」
と声をかけても
始めは黙ってポロポロ泣いているだけでしたが、
「痛かったね、 つらかったね、 大変やったねェ 」
と重ねて伝えていますと、
「はい、つらいです。 悲しいです。
家におる時、炬燵に入りよってこけたんです 」
「2回もこけて、打って…」
「朝起きたら部屋中が真白で、雪が降ってるみたいで、
人に雪ですかって訊いたら 違う 言われて…」
痛みと不安に怯え小さくなっている祖母の心を解そうと、
祖母の心に寄り添いながら祖母の声をずっと聴いていると、
一時間位たった時、
泣いていた祖母が、くすくすと笑い出し、
「おたく誰です?」 と尋ねてきました。
この頃には、私のこともわからなくなっていたのですが、
「私、えりよ 」 と応えると、
「何やえりちゃんか、
誰がずっと話聴いてくれよってんかと思いよった。
ホンマえりや。
目、見える様になったから食堂へ行こか」
と元気に言ってくれました。
他人に厳しかった祖母が認知症になってからは
特に悲しいことが多かったのですが、
ふたりで過ごす時間が穏やかになった様に思います。
少女の様に素直な祖母の笑顔に
とても幸せに思っています。