『人を育む、見守る心』
下関市、川棚温泉の近くに
『楠の森 』 と呼ばれている 樹齢1000年を越す楠があります。
樹高25m、幹回り10.4m、一番長い枝は27mもあるという大きな楠で、
一本の楠なのにまるで森の様に見えることからこの名が付いたそうです。
その『楠の森』に、11月、
下関の大学を受験する息子に付いて行った私を、
佐藤さんは案内して下さいました。
佐藤さんは、広告デザイン会社の社長として、
世界を相手に 第一線で活躍なさってきた方です。
そして、出会いのご縁を頂いてから、ずっと
受験生の息子を見守って下さった方です。
駐車場から 『 楠の森 』 までの道中、佐藤さんが語って下さいました。
「 明日、M君(息子です)を ここに連れてきたいと思っています。
彼がこちらに来る様になったら、もちろん私は全面的に協力致します。
若者を育てるのが 私達大人の務めだと思っていますから。
彼が何かに悩んだり迷った時に、
私の所に来てくれればいくらでも相談にのりたいと思っています。
でも、彼も男です。
そうそう人に頼っては来ないでしょう。
そんな時の為にこの場所を教えておきたいのです。
人間、どんなに偉い人だと云っても生きるのは高々100年程のことです。
でも、この楠は1000年以上生きているのです。
1000年以上ここにいて、様々なものを見てきたこの楠からすれば、
我々人間の悩み等、取るに足りない小さなものだと思いますよ。
彼が悩んだり迷った時、ひとりでここに来て、
この楠と語り合えばいい。
大丈夫。 必ず彼は大きく成長していけます…」
駐車場から坂道を登った先に広場があり、
その奥に『楠の森』はありました。
快晴の空に高く伸びた艶やかな萌黄。
大きく横に伸びた枝は、
まるで両手を広げて訪れた者を迎え入れる様に、
包み込む様に見えました。
楠の近くに立った時、
頬を伝う涙にも気付かず両手を合わせておりました。
研ぎ澄まされたもの、
清らかなものに 包まれた時間でした。
本当に大きな、 あたたかいもの、