「私ね、 子どもの頃から本当に健康で

  一度も病気したことないから、

  お見舞に行くといつもとまどうのよ…。

  何て声を掛ければいいのかわからなくて…」


友人のそんな言葉に、

自分が体験していない事は本当にわからないですね

と、相槌を打ちながら、

何年か前の体験をお話ししました。


ある日、

目の不自由な鍼灸師やマッサージ師さん達の会から

マナー講演の依頼を受けました。


希望内容は、割箸の割り方や お箸や お椀の取り上げ方、

お椀の蓋の開け方 等の 食事のマナーと

接遇マナーの基本でした。


担当者の方は、私の疑問を予想なさっていたのでしょう。

続けてこう仰いました。


 「割箸を きれいに割れるかどうかは 問題ではないのです。

  障害をお持ちの皆さんは、

  始めから出来ないとか 必要ないとか思われて、

  それを学ぶ場に 

  身を置く機会さえ与えてもらえない ことが多いのです。

  私は皆さんに、

  健常者の方と同じ様に、学ぶ機会を持って頂きたいのです。」


始めから機会を与えられない…。

初めて気付かせて頂いた事でした。


そして、当日。

このマナー講演を とても楽しみにしていたとのご挨拶に反し、

皆様のお顔は 大変な 無表情に 仏頂面。


  「そんな表情では お客様に嫌な思いをさせますよ。

   もっと にこやかに!

と、いつもの様にお伝えした私に、


  「笑顔ってどんな顔?」

 

  「相手の顔を見た事がないから、

   表情によってどんな気持ちになるかわからない。


等の、言葉が返ってきました。


私は、何も理解していなかった自分の

無神経な言葉に、はっと致しました。

 

それから、私の顔に触って頂いたり、

皆で大きな口を開けて 大きな声を出して笑う練習等を

させて頂きました。


  「笑顔になったら 気持ちがいい。」

 

  「楽しくなったよ。


 と喜びの言葉を頂けたのですが…。


理解していない事にさえ気付いていなかった私を

深く反省し、

自分が体験していないことはわからないからこそ、

自分の物差しでものを見ない、

考えない様に 気を付けなければ・・と存じました。