【耳鼻科の謎】滲出性中耳炎の治療で「がっこう」って言うのはなぜ?
「〇〇ちゃん、はい、『がっこう』って言ってみようか~」
お子さんを耳鼻科に連れて行ったことがある保護者の方なら、こんな不思議な光景を目にしたことがあるかもしれません。滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)の治療で、鼻から空気を送る「耳管通気(じかんつうき)」という処置の際に、先生や看護師さんがお子さんに「がっこう」と言うように促すことがあります。
でも、なぜ「学校」なのでしょうか?治療と何の関係があるのでしょうか?今回は、この耳鼻科の謎ともいえる「がっこう」の秘密に迫ります。
まずは「滲出性中耳炎」についておさらい
滲出性中耳炎は、鼓膜の奥にある「中耳(ちゅうじ)」という空間に、滲出液という液体が溜まってしまう病気です。特に、耳と鼻をつなぐ「耳管(じかん)」の働きが未熟な子供に多く見られます。
この病気になると、痛みや熱はほとんどありませんが、以下のような症状が現れます。
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聞こえが悪くなる(難聴)
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耳が詰まった感じ(耳閉感)
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呼びかけても返事をしないことがある
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テレビの音を大きくする
痛みがないため、気づかれにくいのが特徴です。お子さんの様子で「あれ?」と思ったら、早めに耳鼻科を受診することが大切です。
治療の切り札「耳管通気療法」
耳管通気療法は、滲出性中耳炎の代表的な治療法の一つです。鼻から耳管に空気を送り込むことで、中耳に溜まった滲出液を排出しやすくしたり、耳管の通りを良くしたりする効果があります。
具体的には、鼻の穴から「通気管」という細い管を入れ、シュッと空気を送り込みます。処置自体は数秒で終わる簡単なものですが、ここで「がっこう」という合言葉が登場します。
謎の合言葉「がっこう」の秘密
では、いよいよ本題です。なぜ「がっこう」なのでしょうか?
実は、「がっこう」と発音すると、口の奥にある軟口蓋(なんこうがい)という部分が持ち上がり、耳管の入り口が瞬間的に開くのです。
耳管は普段は閉じていますが、物を飲み込んだり、あくびをしたりすると一瞬だけ開きます。耳管通気療法は、この耳管が開くタイミングを狙って空気を送り込む必要があります。
そこで、患者さんに「がっこう」と言ってもらうのです。「がっ」で軟口蓋が上がり、「こう」で耳管が開く。この絶妙なタイミングで空気を送り込むことで、効果的に中耳へ空気を届けることができるのです。
ちなみに、「ごっくん」と唾を飲み込む動作でも同じように耳管が開くため、「ごっくんしてね」と促されることもあります。お子さんの場合は、タイミングを合わせやすい「がっこう」という言葉がよく使われるようです。発音が似ている「学校」とかけて、お子さんが治療を面白がって協力しやすくなるというメリットもあるのかもしれませんね。
まとめ
耳鼻科で聞こえる不思議な合言葉「がっこう」には、治療をスムーズに進めるための医学的な根拠がちゃんとあったのです。
滲出性中耳炎は、根気強い通院が必要になることもありますが、聞こえの発達に影響を与えることもあるため、しっかりと治療することが大切です。もし、お子さんが耳管通気療法を受けることになったら、ぜひ「『がっこう』って言うと耳の通りが良くなるんだって!」と教えてあげてください。治療の意味が分かれば、きっとお子さんも安心して頑張れるはずです。