その症状、本当に病院へ行くべき?医療費と時間を節約する「賢い受診」のススメ

 

病院の長い待ち時間、診察は一瞬、そして意外とかかる医療費…。誰もが一度は「このくらいの症状で、わざわざ病院に来る必要あったかな?」と感じたことがあるかもしれません。

実は、医療の現場では、夜間や休日に軽症の患者が救急外来を訪れる**「コンビニ受C」**という言葉があるほど、必ずしも今すぐの受診が必要ではなかったケースが少なくない、と言われています。

もちろん、「念のため」と病院へ行く気持ちは、誰にでもあります。しかし、その少しの心がけが、あなた自身の時間やお金を節約し、さらには日本の医療全体を守ることにも繋がるかもしれません。

この記事は、受診を我慢することを勧めるものではありません。むしろ、自分の体を守るための「判断力(ヘルスリテラシー)」を高め、賢く医療と付き合うためのヒントをお伝えするものです。

 

「行かなくても良いかも」と考えられるケースとは?

 

明確な統計データはありませんが、例えば以下のような症状の場合、まずは慌てて病院へ行く前に、自宅でゆっくり様子を見るという選択肢も考えられます。

 

ケース1:ひきはじめの風邪

 

  • 症状:37.5℃未満の微熱、鼻水、くしゃみ、喉の軽いイガイガ。全体的な倦怠感がひどくない。

  • セルフケア:まずは十分な睡眠と休息をとるのが一番の薬です。温かい消化の良いものを食べ、こまめに水分補給をしましょう。市販の風邪薬(総合感冒薬)も助けになります。

 

ケース2:一時的なお腹の不調

 

  • 症状:食べ過ぎや少し冷えたことによる、一時的な下痢や便秘。激しい腹痛や血便、嘔吐などはない。

  • セルフケア:消化の良い食事(おかゆ、うどんなど)を心がけ、体を温めましょう。市販の整腸剤を試してみるのも良いでしょう。

 

ケース3:小さな切り傷・すり傷

 

  • 症状:傷が浅く、すぐに血が止まった。傷口に土やサビなどが入っていない。

  • セルフケア:まずは水道水で傷口をきれいに洗い流すことが大切です。消毒液を使い、清潔な絆創膏やガーゼで保護しましょう。

これらはあくまで一例です。ポイントは**「症状が軽く、悪化する様子がなく、全身の状態が悪くない」**ことです。

 

【最重要】これは危険!ためらわずに病院へ行くべきサイン

 

自己判断は禁物です。以下の症状が見られる場合は、軽症だと思わず、ためらわずに医療機関を受診してください。夜間や休日であれば、救急外来の受診や救急車の要請も検討しましょう。

  • :突然の激しい頭痛、ハンマーで殴られたような痛み、手足の痺れ、ろれつが回らない

  • :締め付けられるような激しい痛み、圧迫感、呼吸が苦しい、冷や汗

  • :我慢できないほどの激しい腹痛、血を吐いた、便に血が混じる(黒い便も含む)

  • 全身:38℃以上の高熱が続く、意識がもうろうとしている、けいれんを起こした

  • 怪我:骨折が疑われるほどの強い痛みや変形、多量の出血が止まらない

**「いつもと違う」「様子がおかしい」と感じたら、迷わず受診する。**これが大原則です。

 

病院の前に頼れる「選択肢」を知っていますか?

 

「病院に行くべきか、様子を見るべきか、どうしても判断に迷う…」そんな時に頼れるサービスがあります。

 

1. 救急安心センター事業「#7119」

 

「救急車を呼ぶべきか?」と迷った時に電話できる相談窓口です。医師や看護師などの専門家が、症状を聞き取った上で、救急車の必要性や、受診可能な医療機関をアドバイスしてくれます。

  • こんな時に:「子どもが頭を打ったけど、救急車を呼ぶほど…?」「夜中に熱が出たけど、病院はどこが開いてる?」

 

2. 子ども医療電話相談「#8000」

 

休日や夜間に、子どもの急な病気やケガで困った時の相談窓口です。小児科医や看護師が、家庭での対処法や受診の目安を教えてくれます。

  • こんな時に:「子どもの熱が下がらない」「変な発疹が出てきたけど、様子を見ていい?」

 

3. かかりつけの薬局・薬剤師

 

最近では、市販薬(OTC医薬品)も非常に進化しています。症状を薬剤師に伝えれば、最適な薬を選んでくれます。薬の専門家である薬剤師は、セルフケアの心強い味方です。

 

「賢い受診」は、未来の医療を守る社会貢献

 

本当に医療を必要とする重症の患者さんが、スムーズに治療を受けられるようにするためには、医療資源を適切に使うという、私たち一人ひとりの意識が不可欠です。

自分の症状と向き合い、適切な選択をすることは、不要な医療費や待ち時間を減らすだけでなく、限りある医療資源を守り、結果的に自分や家族、そして社会全体を助けることに繋がります。

まずは日頃から自分の体の声に耳を傾け、信頼できる「かかりつけ医」を見つけておくこと。そして、いざという時に慌てないための「知識」を備えておくこと。

それが、これからの時代に求められる「賢い患者」への第一歩なのかもしれません。