これってモラハラ?「ただの厳しい人」との境界線と具体例を解説
「もしかして、自分が受けているこれってモラハラ…?」 「自分の部下への指導は、モラハラになっていないだろうか?」
職場や家庭の人間関係で、こんな風に悩んだことはありませんか?
殴る・蹴るといった目に見える暴力とは違い、言葉や態度による「モラルハラスメント(モラハラ)」は、どこからがアウトなのか線引きが難しい問題です。
この記事では、モラハラの定義から、具体的なシーン別のNG例、そして「これってどうなの?」と迷ったときの判断基準まで、分かりやすく解説します。
そもそも「モラハラ」とは?
モラハラとは、言葉や態度、身振りなどによって、相手の人格や尊厳を傷つけ、精神的な苦痛を与える行為を指します。
日本語では「精神的虐待」「精神的暴力」とも訳されます。 重要なポイントは2つです。
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相手がどう感じたか: たとえ本人に悪気がなくても、受け手が精神的な苦痛を感じ、尊厳を傷つけられたと感じれば、モラハラになり得ます。
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継続性・執拗性: 一度きりの厳しい注意や意見の衝突が、即モラハラになるわけではありません。しかし、そうした相手を不快にさせる言動が繰り返し、執拗に行われる場合、モラハラの可能性が非常に高くなります。
【シーン別】どこからがアウト?モラハラの具体例
「ただの指導」と「モラハラ」の境界線はどこにあるのでしょうか。職場と家庭のシーン別に見ていきましょう。
<職場編>
職場のモラハラは、優位な立場を利用して行われることが多いのが特徴です。
NG例1:人格を否定・侮辱する
業務上のミスを指摘するのではなく、相手の存在価値そのものを否定するような発言です。
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△ 適切な指導: 「この報告書、Aの部分のデータが間違っているから修正して。次はBの資料と突き合わせて確認しよう」
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× モラハラ: 「本当に仕事できないな、給料泥棒だ」「君がいると周りの士気が下がる」「小学生でもこんなミスしないぞ」
NG例2:意図的に孤立させる
仲間外れにすることで、相手に精神的なダメージを与えます。
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△ 業務上の判断: プロジェクトに必要なメンバーだけで会議を設定する。
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× モラハラ: 一人だけ会議の情報を伝えない、挨拶をしても完全に無視する、部署の全員が参加する飲み会に意図的に一人だけ誘わない。
NG例3:能力に見合わない仕事を押し付ける
相手を追い詰めるために、わざと達成不可能な仕事を与えたり、逆に全く仕事を与えなかったりします。
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△ 適切な業務配分: 本人の成長を期待して、少し挑戦的なレベルの仕事を任せる(ただし、サポート体制は整える)。
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× モラハラ: 絶対に定時内に終わらない量の仕事を丸投げする。逆に、能力があるのに誰でもできる雑用しかさせない。
NG例4:プライベートに過剰に干渉する
業務とは無関係な私的な領域に、執拗に踏み込んできます。
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△ コミュニケーション: 「週末はゆっくりできましたか?」など、当たり障りのない会話。
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× モラハラ: 「まだ結婚しないの?」「休みの日は誰と何してたの?」としつこく聞く。恋人の有無や家族構成を執拗に詮索する。
<家庭・パートナー間編>
家庭内のモラハラは、外部から見えにくく、愛情や心配とすり替えられやすいのが特徴です。
NG例1:「誰のおかげで」と恩着せがましい
相手を見下し、支配しようとします。経済的な自由を奪う「経済的DV」もこの一種です。
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× モラハラ: 「誰のおかげで生活できてると思ってるんだ」「君の稼ぎじゃ何もできないくせに」と言って見下す。生活費を渡さなかったり、相手のお金の使い方を細かくチェックしたりする。
NG例2:相手の人間関係や価値観を否定する
相手の世界を狭め、自分だけが正しいと信じ込ませようとします。
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× モラハラ: 「お前の友達はろくなのがいないから付き合うな」と交友関係を制限する。「そんな考えだからお前はダメなんだ」と常に価値観を否定する。相手の好きな趣味やものを馬鹿にする。
迷ったらチェック!モラハラ加害者の「よくある行動」
「これってモラハラなのかな…?」と確信が持てないときは、相手の行動に以下の特徴がないかチェックしてみてください。
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二人きりや密室で豹変する: 周りに人がいるときは優しいのに、二人きりになると態度が変わり、厳しい言葉を浴びせてくる。
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気分で言うことがコロコロ変わる: ある日は褒めたかと思えば、次の日には同じことで激しく叱責するなど、一貫性がない。相手を混乱させ、常に顔色を窺うように仕向けます。
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「あなたのため」と罪悪感を植え付ける: 「君のためを思って厳しく言ってるんだ」「私がこんなに苦しいのは誰のせい?」と、あたかも被害者が悪いかのように思い込ませる。
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心や体に不調が出ている: その人のことを考えたり、会ったりすると、動悸がする・胃が痛む・眠れない・食欲がないなど、体にサインが出ていたら危険信号です。
もし「モラハラかも」と思ったら
もしあなたがモラハラを受けていると感じたら、決して「自分が弱いからだ」などと一人で抱え込まないでください。
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記録する 「いつ、どこで、誰に、何を言われた(された)か」を具体的にメモしましょう。スマホのメモ機能でも構いません。ICレコーダーでの録音は、客観的な証拠として非常に有効です。
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相談する 信頼できる家族や友人、同僚に話してみましょう。客観的な意見をもらうことで、状況を整理できます。社内にコンプライアンス窓口や人事部があればそこに相談するのも手です。外部の公的な相談窓口もあります。
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総合労働相談コーナー(職場の場合)
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法テラス
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みんなの人権110番
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距離を置く 可能であれば、その相手と物理的・心理的に距離を置きましょう。心と体を守ることが最優先です。
モラハラかどうかを決めるのは、あなた自身の心の状態です。もしあなたが誰かの言動によって深く傷つき、毎日つらい思いをしているのなら、それは決して「気にしすぎ」ではありません。まずは自分を守るための第一歩を踏み出してください。