【2025年版】画像生成AIの著作権を弁護士が解説!作ったイラストは誰のもの?使う時の注意点とは
「Midjourney(ミッドジャーニー)」や「Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)」といった画像生成AIの登場で、誰もが驚くほど高品質なイラストや画像を、いとも簡単に作れるようになりました。
その一方で、こんな疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
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AIが作った画像の著作権って、一体誰にあるの?
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生成した画像をSNSのアイコンや商用利用で使っても大丈夫?
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有名なイラストレーターの画風に似た画像が出てきたけど、これって違法?
この問題は、クリエイターだけでなく、AIの画像を利用したいと考えているすべての人に関わる重要なテーマです。
そこで今回は、画像生成AIと著作権の基本的な関係から、安心して使うための注意点まで、日本の法律(2025年7月現在)と文化庁の見解に基づいて、分かりやすく解説していきます。
【結論】原則として、AIが作っただけの画像に「著作権は発生しない」
いきなり結論からお伝えします。現在の日本の著作権法では、AIが自動的に生成した画像そのものには、原則として著作権は発生しないと考えられています。
「え、どうして?」と思いますよね。
その理由は、日本の著作権法が、著作物を**「思想又は感情を創作的に表現したもの」**と定義しているからです(著作権法第2条第1項第1号)。 著作権は、人間の「思想や感情」が「創作的に表現」されて初めて生まれる権利なのです。
現状、AIは人間のような思想や感情を持つ主体とは認められていません。そのため、AIが自動で生成したものは「人間の創作物」とは言えず、著作権が発生しない、というのが基本的な考え方です。
これは文化庁も公式な見解として示しており、AI自身や、AIの開発者、利用者に自動的に著作権が帰属するわけではない、とされています。
【例外】AI生成画像に「著作権が発生する」ケースとは?
ただし、これには重要な例外があります。それは、**「人間の創作的寄与」**が認められる場合です。
簡単に言うと、**「AIを道具として利用し、そこに人間の創作的な工夫が加わっている」**と判断されれば、その画像には著作権が発生し得るのです。
では、どのような場合に「創作的寄与」が認められるのでしょうか。
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AIが生成した画像に、人間が大幅な修正や加工を加えた場合 AIが生成した画像を素材として、人間がレタッチソフト(Photoshopなど)で、新たなキャラクターを描き加えたり、背景を大きく描き変えたりして、独自の作品に仕上げた場合などがこれにあたります。
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プロンプト(指示文)に高度な創作性が認められる場合 単純な単語の羅列(例:「猫、かわいい、サイバーパンク」)ではなく、誰が書いても同じような結果にならないような、具体的で詳細、かつ独創的なプロンプトを与えた場合、そのプロンプト自体に創作性が認められ、結果として生成された画像にも著作権が発生する可能性があります。ただし、どの程度のプロンプトであれば創作的寄与と認められるかについては、まだ明確な基準がなく、今後の議論が待たれる部分です。
つまり、AIを単なる「自動生成ツール」として使っただけでは著作権は生まれず、「創作のための道具」として人間が深く関与して初めて著作権が生まれる可能性がある、と覚えておきましょう。
絶対に知っておきたい!AIと著作権の重要Q&A
ここからは、皆さんが特に気になるであろう疑問について、Q&A形式で解説します。
Q1. AIの学習データに既存のイラストが使われているけど、違法じゃないの?
A. 日本では、AI開発のための学習目的であれば、原則として著作権者の許諾なく利用できます。
日本の著作権法には、AI開発のような情報解析を目的とする場合、著作物を自由に利用できるという規定があります(著作権法30条の4)。そのため、AI開発者が学習のためにインターネット上の画像を収集・利用すること自体は、原則として適法とされています。
ただし、「著作権者の利益を不当に害する場合」は例外とされています。例えば、特定のイラストレーターの画風を学習させたAIサービスを、そのイラストレーターの作品の海賊版を作る目的で提供するようなケースは、違法となる可能性があります。
Q2. AIが生成した画像が、既存の作品にそっくり!これって著作権侵害?
A. 著作権侵害になる可能性が十分にあります。
たとえAIが作った画像であっても、それが既存の著作物と①似ていて(類似性)、**②それを元にして作られた(依拠性)**と判断されれば、著作権侵害(複製権・翻案権の侵害)となります。
AIが偶然似たような画像を生成したとしても、元の作品が有名であったり、プロンプトにその作品を想起させる言葉を使ったりした場合、依拠性があると判断されやすくなります。
生成した画像を利用する前には、Googleの画像検索などを使って、似たような作品が既に存在しないか確認することを強くお勧めします。
Q3. AI生成画像を商用利用してもいいの?
A. 著作権とは別に、各AIサービスの「利用規約」を必ず確認してください。
著作権が発生しない画像であっても、それを自由に使えるかどうかは別の話です。重要なのは、あなたが使っている画像生成AIサービスの利用規約です。
サービスによって、
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無料で生成した画像は商用利用不可(有料プランならOK)
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商用利用は全面的にOK
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クレジット(©Midjourneyなど)の表記が必須
といったように、ルールは様々です。利用規約を読まずに商用利用してしまうと、規約違反でアカウント停止や、思わぬトラブルに繋がる可能性があります。利用前に必ず、公式サイトの利用規約(Terms of Service)を確認しましょう。
AI生成画像を安心して使うための3つのチェックリスト
最後に、トラブルを避けるためのチェックリストをまとめました。
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☐ 1. AIサービスの利用規約を読みましたか? 商用利用の可否、クレジット表記の要不要などを確認しましょう。
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☐ 2. 生成した画像が既存の作品に酷似していませんか? 特にキャラクターやロゴなど、特徴的なものについては画像検索で入念にチェックしましょう。
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☐ 3. 他者の権利を侵害したり、誰かを傷つけたりする使い方をしていませんか? 実在の人物の画像を無断で生成して名誉を毀損したり、特定のクリエイターの作品を意図的に模倣して販売したりする行為は、著作権以外の問題にも発展します。
まとめ
画像生成AIと著作権の問題は、まだ法律や社会のルールが技術の進化に追いついていない、発展途上の分野です。
現時点でのポイントをまとめると、
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AIが自動生成しただけの画像に、原則著作権は発生しない。
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人間の「創作的寄与」があれば、著作権が発生する可能性がある。
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既存の作品に似ていれば、著作権侵害になるリスクがある。
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商用利用などのルールは、各サービスの「利用規約」次第。
ということになります。
AIは、私たちの創造性を飛躍的に高めてくれる素晴らしいツールです。だからこそ、作り手も、使う側も、正しい知識とルール、そして他者へのリスペクトを持つことが不可欠です。
常に最新の情報に関心を持ち、マナーを守って、AIとの共存時代を楽しみましょう。