予言はなぜ的中するように見えるのか?確率と心理学で解き明かす「当たりすぎる」のカラクリ
「ノストラダムスの大予言」「世紀の預言者が未来を的中!」
私たちは、未来を言い当てるというミステリアスな話に、昔から心を惹きつけられてきました。まるで超能力のように未来を見通す予言者たち。しかし、その「的中」の裏には、実は巧妙なカラクリと、私たちの脳の「クセ」が隠されています。
今回は、予言がなぜ当たるように見えるのかを、確率と心理学の視点から解き明かしてみましょう。
カラクリ①:誰にでも当てはまる「曖昧な言葉」
予言の的中率を考える上で、最も重要なのがその表現の曖昧さです。多くの有名な予言は、非常に抽象的で、複数の解釈ができるように作られています。
例:「大きな星が落ち、国が泣く」
この予言を考えてみましょう。
-
「大きな星」とは? → 著名人の死、飛行機事故、人工衛星の落下、経済的な大企業の倒産…
-
「国が泣く」とは? → 戦争、災害、経済危機、国民的な悲劇…
このように、一つの予言に対して無数の解釈が可能です。そして、何かが起こった後になってから、「あの予言は、この出来事のことだったんだ!」と後付けで意味づけをするのです。
これは「バーナム効果」と呼ばれる心理効果にも似ています。「あなたは優しい面もあるが、時には頑固な一面もある」と言われると、多くの人が「当たっている!」と感じるのと同じで、誰にでも当てはまるような表現が「的中」の正体なのです。
カラクリ②:数撃てば当たる「確率論」
どんなに低い確率のことでも、試行回数を増やせばいつかは起こります。予言もこれと同じで、膨大な数の予言が世の中には存在します。
例えば、ある予言者が100個の予言をしたとします。そのうち99個が外れても、たった1個でも当たれば、人々はその1個の「的中」を強く記憶します。外れた99個の予言は、いつの間にか忘れ去られてしまうのです。
これは、私たちが無意識に行っている情報の取捨選択です。インパクトの強い「当たった予言」だけが語り継がれ、予言者の評価を不当に高めていきます。
カラクリ③:信じたいものを信じる「脳のクセ」
予言の的中には、受け手である私たちの心理状態も大きく関わっています。その代表が**「確証バイアス」**です。
確証バイアスとは、自分が信じていることを裏付ける情報ばかりを集め、それに反する情報を無視してしまう心理的な傾向のことです。
「この予言者は本物だ」と一度信じてしまうと、その予言に合致する出来事を必死に探そうとします。多少こじつけに思えるような解釈でも、「やっぱり当たっていた!」と結論づけてしまうのです。予言の「的中」は、予言者本人よりも、むしろ信じている受け手の心が生み出している側面が強いと言えます。
カラクリ④:予言が現実を動かす「自己成就予言」
これは少し特殊なケースですが、非常に強力な現象です。「自己成就予言」とは、予言そのものが人々の行動に影響を与え、結果としてその予言通りの現実を作り出してしまうことを指します。
最も分かりやすい例が、金融市場です。 「A銀行は来月倒産する」という根拠のない噂(予言)が流れたとします。それを信じた人々が預金を引き出すために銀行に殺到すると、取り付け騒ぎが起こり、本当にA銀行は資金繰りが悪化して倒産してしまいます。
この場合、予言が未来を「言い当てた」のではなく、**予言が未来を「創り出した」**のです。
まとめ:未来は予言されるものではなく、創るもの
こうしてみていくと、予言の的中の多くは、超常的な力ではなく、以下の4つの組み合わせで説明できることが分かります。
-
曖昧な言葉による後付け解釈
-
数撃てば当たるという確率論
-
確証バイアスという脳のクセ
-
自己成就予言による現実化
もちろん、未来への興味やロマンを完全に否定する必要はありません。しかし、そのカラクリを知ることで、私たちは不確かな情報に振り回されることなく、より冷静に物事を判断できるようになります。
未来は、誰かに予言されるのを待つものではなく、私たち自身の選択と行動によって創られていくものなのです。