【因果推論の最前線】構造的因果モデル(SCM)とは?グラフ×方程式で“なぜ?”に答える数理フレームワーク🧩📊

「相関関係はある。でも、それは因果関係なの?

そんな疑問に正面から答えるために発展してきたのが、**構造的因果モデル(Structural Causal Model, SCM)**です。

統計学×グラフ理論×方程式を融合したこのフレームワークは、因果推論の中核をなす存在として、機械学習・社会科学・医療・経済学など幅広く応用されています。

この記事では、

  • 構造的因果モデル(SCM)とは何か?

  • 従来の統計モデルとの違い

  • 数理的な構造と操作可能性

  • 実践での使い方と応用例

を、初学者にもわかりやすく解説します🧠🔍


✅ 構造的因果モデル(SCM)とは?

SCMとは、

因果関係を明示的に記述するモデルで、各変数を“構造方程式”と“グラフ構造”で表現する枠組み

です。

🔧 数学的構成

構造的因果モデルは、3つの要素から成り立ちます:

  1. 変数集合:観測変数 V={X1,X2,...,Xn}V = \{X_1, X_2, ..., X_n\}

  2. 構造方程式の集合:各変数を決定する関数
      Xi=fi(pai,Ui)   X_i = f_i(\text{pa}_i, U_i)  
     ここで pai\text{pa}_i:XiX_i の親変数、UiU_i:外生ノイズ

  3. 因果グラフ(DAG):変数間の因果関係を示す有向非巡回グラフ


📊 SCMのイメージ図

U1     U2     U3
↓      ↓      ↓
X1 →   X2  →  Y
  • X1X1 は X2X2 に因果的に影響

  • X2X2 は YY に影響

  • 各ノードには外生ノイズ UU がある(観測不能)

📌 このグラフ構造が因果関係そのものを表現しているのがSCMの特徴!


🔁 統計モデルとの違い

特徴 従来の統計モデル 構造的因果モデル(SCM)
関係の意味 相関・条件付き独立 因果関係
数式の向き 対称(同時分布) 非対称(原因 → 結果)
操作(介入) モデル外で扱う(シミュレーション) 明示的に「do演算」で扱える
グラフの使い方 ベイジアンネット(推論目的) 因果推論目的のグラフ

🔨 SCMでできること

✅ 1. 介入(do演算)による因果効果の計算

P(Y∣do(X=x))P(Y \mid \textbf{do}(X = x))

→ ただの条件付き確率ではなく、「X を x に強制的に固定した世界での Y の分布」を意味する

✅ 2. 反実仮想(counterfactual)

「もしあのとき、AをしていなかったらBはどうなったか?」

SCMでは、**実際に観測されたデータに基づいて、“別の選択肢を取った場合の世界”**を数学的に構築できます。

✅ 3. 因果構造の学習・識別

  • 観測データだけから因果構造(グラフ)を復元する

  • 「因果探索(Causal Discovery)」アルゴリズムがここで登場(例:PCアルゴリズム、LiNGAM)


🧠 SCMの実用例

🏥 医療:治療の効果推定

「薬Aが本当に症状改善に寄与したのか?」
→ do(薬Aを投与) で症状の変化をモデル化

📈 経済学:政策評価

「最低賃金引き上げが雇用に与える影響は?」
→ do(最低賃金 = x) による介入分析

🧬 バイオ:遺伝子ネットワーク

→ 因果グラフで遺伝子間の調節関係をモデリング

🤖 AI:因果強化学習・ロバスト推論

→ SCMを使った外挿性の高いモデルの構築が注目されている


🛠 PythonでのSCMツール

  • DoWhy: Microsoft製の因果推論ライブラリ

  • CausalNex: Bayesian Networkベースの因果分析ツール

  • dowhy.gcm: グラフィカル因果モデルの拡張

  • econml: 経済モデル × 機械学習の因果推論

📌 いずれも、SCM的なフレームワークで介入・反実仮想の推定が可能


✅ まとめ

  • 構造的因果モデル(SCM)は、変数間の因果構造をグラフと関数で明示的に定式化するモデル

  • 条件付き確率だけでは扱えない「介入」「反実仮想」が可能

  • 統計モデルと違って、操作・干渉のシナリオを数学的に表現できる!

  • 医療・政策・AIなど、実世界の“なぜ”に答えるための基盤


次回は、**「do演算とは何か?ベイズとの違いは?」**をテーマに、介入を扱う数学的ツールとしてのdo演算を深掘りしていきます!

因果推論をさらに一歩進めたい方は、ぜひご期待ください📘✨