【群論の発展編】交代群とは?偶置換だけの群の構造と性質をわかりやすく解説🔀🧮
対称群 SnS_n が「すべての置換(並び替え)」を含む群であるのに対し、その中でも**「偶数回の入れ替え」で表せる置換だけを集めた群**が存在します。
それが、**交代群(Alternating Group)**です。
この記事では、交代群の定義・性質・対称群との違い・応用までを、初学者にもわかりやすく丁寧に解説します😊📐
✅ 交代群とは?
🔁 **偶置換(even permutation)**とは?
2つの要素を入れ替える操作(=互換)を偶数回行う置換のこと。
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(123)=(12)(23)(123) = (12)(23) → 2回の互換 → 偶置換
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(12)(12) → 1回の互換 → 奇置換
🧠 交代群 AnA_n の定義:
n個の要素の偶置換すべてからなる群
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An⊂SnA_n \subset S_n(対称群の部分群)
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演算は置換の合成
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群の位数(要素の数):
∣An∣=n!2|A_n| = \frac{n!}{2}
つまり、対称群のちょうど半分が偶置換からなる交代群です。
🧪 具体例で理解しよう
✅ A3A_3 の場合
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S3S_3 の置換は 6通り:
e, (12), (13), (23), (123), (132)
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偶置換(互換2回または0回で書ける):
e, (123), (132)
→ これらが 交代群 A3A_3 のメンバー。よって、
∣A3∣=3|A_3| = 3
✅ A4A_4 の場合
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S4S_4 の置換は 24通り → A4A_4 はその半分の 12通り
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A4A_4 は初めて「単純群」ではない例(部分群を持つ)
🔍 偶置換と符号関数(sign)
置換 σ∈Sn\sigma \in S_n に対して、
sgn(σ)={+1偶置換(even)−1奇置換(odd)\operatorname{sgn}(\sigma) = \begin{cases} +1 & \text{偶置換(even)} \\ -1 & \text{奇置換(odd)} \end{cases}
この符号関数の**核(ker)**が、まさに交代群 AnA_n です!
📌 群準同型の視点でも重要!
📊 交代群の性質まとめ
性質 | 内容 |
---|---|
位数 | ( |
部分群 | An⊂SnA_n \subset S_n(インデックス 2 の部分群) |
正規部分群 | An◃SnA_n \triangleleft S_n(なぜならインデックス2だから) |
単純群(simple) | AnA_n(n ≥ 5)は単純群 → 群論の分類において超重要! |
非可換群 | n ≥ 4 では非可換。構造が複雑化 |
Galois理論と深く関係 | 代数方程式の解の存在条件に登場 |
💡 応用分野
🔐 Galois理論
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5次以上の方程式が一般には代数的に解けない理由は、交代群が単純群になることに関係!
🔢 組合せ論・対称性の分類
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対称性の“偶奇”を見分ける場面に登場
🧬 物理・化学(分子対称性)
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ある対称操作が偶置換かどうかを分類することで、物理的性質が変わることがある
🧠 機械学習(対称性を保つ設計)
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Permutation-invariant モデル設計時、出力の整合性を保つために偶置換だけを考慮するケースも
✅ まとめ
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交代群 AnA_n は、「偶置換」だけからなる対称群の部分群
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対称群のちょうど半分 → ∣An∣=n!2|A_n| = \frac{n!}{2}
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n ≥ 5 で 単純群 → 群の理論的分類の基礎をなす
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数学・物理・暗号理論など、応用範囲は非常に広い!
次回は、「単純群とは何か?なぜそれが“群の素粒子”と呼ばれるのか?」というテーマで深掘りします!
群論の核心へとさらに迫っていきましょう✨📚