俊とヒロくんが同じ会社だと知って、

俊も気になったらしく、

ヒロくんの事を

会社で彼を知る人に聞いてみたと言っていた。


「出来る子だったけど、

上の言うこと聞かないんだよね~。」


俊とヒロくんが出会ってたらどうだったろう。

二人の営業の仕方が全く違うのよね。


俊はベテランで、

具体的な内容を提示していく、

静かに着実な営業。


ヒロくんは、新人社員らしく

勢いとキラッキラのやる気で

野球少年みたい。

営業先は「よく頑張ってるね~」

と言って、必ずお菓子や飴をくれてた。

可愛い子供扱い。


会社から帰ると

直筆で営業先に手紙を何百通も書いて、

郵送ではなく

直にポスト投函して回るのが日課だった。


そんなヒロくんも、

会社と合わないとなったら

やる気も失せて、

1年で辞めてしまった。


私のお店では、

よく働いてくれてたんだけど

段々と横暴になってきて


「俺、店オープンしたから。」


と周囲に吹聴するようになった。

私がオーナーで、

私のお金で始めたお店。


それを言ってもどこ吹く風、

皆の前で


「雪子ママクビにして

○○ちゃんをママにしようかな~♪」


なんてヒロくんがオーナーみたいな事を

言い出すものだから、

私の面目は丸潰れ。


自分の友達にも


「俺、店始めたから遊びに来てよ。

安くするよ。」


などと言って、

あり得ない安い料金で入れちゃったりして。


従業員も??という感じで、

ヒロくんに色々相談するようになっていってしまって、困った。


私が「いい加減にして!私のお店なの!」

と怒ると、


「ホラ、また雪子ママはこうやってさ。

クビだね、クビ!」


「そんなことしてると、皆辞めたくなっちゃうよね~?」


もう、私にとってヒロくんの存在は

ホラーでしかなかった。


私は毎日悪夢を見るようになり、

言動もおかしくなっていった。

  

  

  

  

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