それでね
社長が、人脈の広さを使って
ある程度彼女の身の辺を調べてくれてたの。
彼女の旦那は、同じインド人なんだけど
就労ビザの内容に不備だか違反があって、
1週間前に会社を解雇、
事実上クビになってるんだって。
「ママ、あまり深入りしない方がいいよ。」
「もうすぐ彼女の旦那、ビザ切れるから。
俺に『旦那も雇ってもらえないか』って聞いてきたけど、断ったんだよね。前の仕事、自分から辞めたんじゃなくてクビだしさ。そこの社長も俺知り合いなんだよ。」
「旦那は彼女に嘘をついてる。彼女には見栄を張りたいのかね、特別な技術職のビザだと言ってるみたいだけど、彼はただの労働ビザなんだよ。」
ママの頼みだから一応彼女採用はしたけど、
どの道、半年後に夫婦で帰国する事になると思う。」
「彼女、どうする?」
と言うから、
「せっかくだし、会社と社長に迷惑でなければ、
彼女に仕事させてあげてほしい」
って伝えた。
何はともあれ、
彼女にとって
日本での体験として思い出になるといい。
そこは自分の感情と切り離して考えた。
で、そこから社長の顔が険しくなって
「ママね、こんな事言いたくないんだけど。」
「仕事無くなって、今彼女のバイト代に頼るしか無いわけじゃん。ビザも切れるじゃん。」
「そういう人間を俺いっぱい見てきてるんだよ。」
「まさかとは思うけどねママ、
ママの資産をリサーチしに来るかも知れないから、
気を付けて。」
って言われた。
えー?まさか!
って笑ったんだけど
「いや、他人事じゃない。仕事無くなって、金無くなって住む場所無くなって、帰国する金すらも無くなったら、人間わからない。」
って。
「ママが、困ってる人を応援したい。
って気持ちもわかるんだけどね。
ママが考えるのとは別次元の人間も
この世の中には居るんだよ。」
「念のためね。」
ちょっとゾワっとした。
そう考えたくはないけどね。
そうねもし、誘拐騒ぎのあの時、
私が男性だったとしたら?
もし彼女が「触られた」なんて言ったら
どうなってた?
とりあえず拘束されてたと思うよね。
と思ったらちょっとゾワっとした。