この辺りから、

俊の口調が事務的な敬語に変わってきた。
「わかりました。」
「引きずらないって合意したはずです。」
他人行儀な冷たい口調に、
あぁ、もう本当に終わりなんだ。
こんなにあっさりと。
結局は彼は何を捨てる事もなく、
私を手放すんだ。

虚しくなった。

しかも、私から俊を誘ったのが事の始まり。
などとまるで逃げ口上のような事を言い出した。
もし、奥さんにバレた時は
こんな風に私のせいにして逃げるんだろうな。

確かに、酔って私からベタベタしたのは事実だけど、最後までしてしまって、
朝になって「うわ、しまった!」と私は思った。
泥酔して、顔もろくに覚えてなかった。
もう会わないだろうな、
ワンナイトで終わりだな、って思ってた。
特に思い入れも無いし、
特別に惹かれる何があるってわけでも無かったから。

その後グイグイ来たのは俊の方。
その日のうちに
「大阪に帰る前に会いたい」と連絡が来た。
私は特に会いたくもなかったから、断った。
その後もバンバン連絡が来るのを
適当にあしらって断ってた。

強引に2度目にお店に来た時に、
流れでまたセックスをした。
相性は抜群だった。
そこから、段々と俊に気持ちが向いていった。

付き合うことになって、
4ヶ月間は、彼が既婚者だということを知らなかった。8ヶ月間は、二股だということに気付かなかった。彼の細かい嘘には気付いてたけれど、
なんかおかしいな、っていうことには気付いていたけれど、まさかの真実。

「ゲスな最低男」
私は俊を散々罵った。
彼はひたすら謝るだけだった。
謝って謝って、それでも
「離れたくない」
と言い張った。

でももう無理。不倫二股とか無理。
一緒になった所で、
この人の女グセは一生治らないと思う。
ずっと苦労し続けることが目に見えてるから。

別れるなら今だ。