腸の神経系では、粘膜近くにあるマイスナー神経叢が腸の内容物の刺激を感知すると、内在ニューロンを蠕動運動や腺分泌を支配するアウエルバッハ神経叢や脳中枢に向かう(求心性)迷走神経に飛ばします。

 そのニューロンを受け取ったアウエルバッハ神経叢は、脳中枢からの副交感神経や交感神経からの影響(遠心性)を受けながら、消化管の輪走筋や縦走筋を収縮(興奮系)させたり、弛緩(抑制系)させたりすることによって、蠕動運動や消化管運動、粘膜筋層の運動と腺分泌などを引き起こします。

この蠕動運動や分腺分泌など腸管内の働きは、腸管内神経系(マイスナー神経叢&アウエルバッハ神経叢)が中心となり形成されており、脳からの交感神経や副交感神経の指示は調整程度であると考えられている。いわゆる、腸管は基本的に脳の指示がなくともほとんど自分で動いているということなのです。

しかし、先にも述べたようにマイスナー神経叢の情報は迷走神経(求心性)を通して脳中枢に伝えられ、交感神経や副交感神経を通してアウエルバッハ神経叢にフィードバックされている。

 また、胃腸管には次のような受容体がある事が確認されている。

セロトニン(5HT)受容体

 ・5HT2受容体;平滑筋にあり平滑筋収縮を起こす(瞑想時胃が温かくなるのはこのため!?、5HT2b

 ・5HT3受容体;迷走神経(副交感神経)や腸管神経叢の神経節や、内在性知覚神経終末に存在する。下痢や嘔吐の原因となる

 ・5HT4受容体&5HT7;消化管・胃腸運動。アウエルバッハ神経叢に作用して、アセチルコリンを放出し、消化管運動を促進する。

ムスカリン受容体(アセチルコリン受容体の一つ);、アウエルバッハ神経叢や副交感神経の伝達物質として消化管活動を亢進させる。

D2受容体;胃の副交感神経終末にあり、アセチルコリンの放出を抑制する。

オピオイド受容体;モルヒネの鎮痛作用や多幸感に関わるμ受容体も存在し、副交感神経&交感神経を介して、促進と抑制に関わっている。

 

腸がオピオイド(モルヒネ様物質)と関わりがあるなんて驚きですよね!? 

 

次回はセロトニンの神経伝達物質としての働きではなく、局所ホルモン(オータコイド)としての説明をします。

 脳内セロトニンについては科学的研究ベースの考えと根拠の定かでない商業的憶測が入り混じっているのに対し、腸神経系については比較的純粋に科学的研究ベースの情報が得られ易いように思います。

 腸には腸管の内側から絨毛などからなるひだの部分の粘膜があり粘膜筋板という薄い筋肉層で仕切られていて、その奥には、マイスナー神経叢輪走筋アウエルバッハ神経叢縦走筋と続き、漿膜が腸管を包み込んだ構造になっています。輪走筋は腸管を輪ゴムのようにとり巻きギュギュっと握る感じの筋肉です。

 縦走筋は腸管の流れの方向に沿った平滑筋で縮んだり戻ったりすることで蠕動運動を司る筋肉です。

 腸管絨毛には腸クロム親和性細胞(重クロム酸カリウムで褐色に染色される細胞ということで、クロムそのものとの関係ありません。EC細胞とも言う)でセロトニンが合成され、絨毛細胞内の小胞に蓄えられます。

 末梢セロトニンはタンパク質としては非常に分解しやすく(分解酵素:26Sプロテアソーム)、20分程度で半分が置き換わるとといわれています(脳神経系の分解については不明)。また、絨毛自体も1.5日~3日程度で置き換わりますので、食事でセロトニンの原料であるトリプトファンを多く摂ったからといって、それがそのまま何らかの作用を引き起こすというわけでもありません。

 また腸セロトニンはトリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH1)によって合成されますが、その活性は脳内セロトニン合成酵素(TPH2)とは全く逆相関であることが明らかとされています。

 いわゆる、腸セロトニンの合成酵素活性(TPH1)を高めれば、脳内セロトニンの合成(TPH2)が抑制されるということなのです。脳内セロトニンが少なく、末梢セロトニンが増えるとイライラが増し、凶暴な行為をとりやすくなることは忘れないで下さいね叫び

 

少し長くなりましたので、次回は腸神経系と脳神経系の腸管内での、腸の独自作用と中枢系との相互作用について説明しますグッド!

セロトニンは血管の緊張を調節する物質として発見されたことから、名前はserum (血清)とtone(トーン)に由来している。

 体内には10mgのセロトニンが存在し、腸管には90%、血小板に8%、脳内神経系に1~2%が存在しているといわれている。

 セロトニンの合成は主に脳内と腸管で合成され、妊娠時には胎盤でもその機能を有すとされている。

 血小板に含まれるセロトニンは細胞損傷などの止血時に血小板凝集に伴い分泌され、血管平滑筋を収縮させる(切り傷をした時は血小板の凝集とともに血管を収縮させ止血を容易にする)。

 血小板に含まれるセロトニンは腸管を流れる血流により取り込まれるとされ、血液中には一定量のセロトニンが存在し血管の緊張を調整している。肥満細胞にも小胞顆粒として含まれ、炎症時にヒスタミンやブラジキニンなどと共に放出される炎症・発痛誘因物質である事もよく知られている(スズメ蜂の蜂毒の主成分としても有名です)。

 また、セロトニンには脳・神経系で抑制系神経伝達物質として作用する脳内セロトニン(酵素TPH2により合成)と腸管絨毛腸クロム親和性細胞で合成される炎症性末梢セロトニン(酵素TPH1により合成)がある事が知られている。

 近年、神経伝達物質としてのさまざまなセロトニン受容体などが発見されセロトニンの作用も解明されつつあるとはいえ、基本的な脳・神経系セロトニンの動態や作用メカニズムについては、残念ながらまだまだ単なる仮定や推定の域のものが多いように思えます。

 それら内容についてはインターネット等で容易に調べられるのでここでは省略します。

 結論的に、セロトニンは血液脳関門を通過できないことから、抑制系神経伝達物質である脳内セロトニンを増やすには、

①セロトニンの原料となるトリプトファンをいかに脳内に取り込むか(トリプトファン/他のアミノ酸との比が重要)

②トリプトファン合成酵素(TPH2の活性化を促す

③トリプトファン代謝主経路であるキヌレニン経路とセロトニン経路のバランスを整える

が最重要となります。

 

一方、末梢セロトニンについては比較的実験などによる因果関係が把握しやすいこともあり、近年その全容も明らかにされつつあるようです。

 炎症系末梢セロトニンと、腸管神経系やセロトニンのオータコイド(局所ホルモン)とのかかわり、炎症系抹消セロトニンの低減方法については次回以降のブログにて説明します。