“昨日の続き”  脳内セロトニンの増やし方

 

 メカニズム的には次の3項が重要となる。

①セロトニンの原料であるトリプトファンをいかに脳内に取り込むか(トリプトファン/他のアミノ酸との比が重要)

②末梢セロトニン合成酵素(TPH1)の活性を抑制し、脳内セロトニン合成酵素(TPH2)の活性を促す

③トリプトファン代謝の主経路であるキヌレニン経路セロトニン経路バランスを整える

 

 上記②項および③項については、ビタミンDの重要性が指摘されており、今日急増している脳内セロトニン不足に関する諸疾患や凶悪犯罪などの根底には日照不足(過剰に紫外線を避ける傾向による)が関わっていると考えられる。

 

 最近の研究によると、ビタミンDは10%にも及ぶ遺伝子の活性化に関わっていると考えられていて、自閉症が増加し、ビタミンD欠乏が多くなっているのは、日焼け止め利用や屋外にあまり出ないことが関連しているとされている。

 ビタミンDにより制御される遺伝子の一つとして、セロトニン合成酵素トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)をコード化することが明らかとされている。

 

 ビタミンDによる遺伝子制御

         ↓

 トリプトファンヒドロキシラーゼ(TPH)をコード化

         ↓     血中ビタミンD濃度が高い

 2種TPH 脳内(TPH2) 脳内セロトニン ↑

      腸内(TPH1) セロトニン分泌を不活性、

              腸内炎症↓

 

 ビタミンDは、食事、サプリメントや薬剤、太陽光から得られる。

 食物からのビタミンDの摂取については、キノコ類や魚類に多く存在するが、穀類や芋類、豆類、果実類、海藻、野菜類、肉類などにはほとんど含まれない。

 また、太陽光の影響として

1日当たり5.5μgのビタミンDを生成するのに必要な日照時間(分)

 

       7月           12月

    9時  12時  15時   9時  12時  15時

札幌   7.4       4.6       13.3       497.4      76.4    2741.7

筑波    5.9        3.5       10.1       106.0      22.4     271.3

那覇    8.8        2.9        5.3        78.0       7.5      17.0

 

 脳内セロトニンを増やす方法としては次のことに心がけよう!

朝日に当る直接的な紫外線でなくてよい)。日光を浴びて14~15時間たつとメラトニンが活性化される。日光を浴びることで生体時計はセットされさまざまホルモンのリズムが作られる。 

腸内環境を整える

 腸内環境を整え、ビタミンB3、ビタミンB6の不足を起こさない玄米など玄穀穀類、芋類、豆類、果物、野菜類など食物繊維の多い食品を充分に摂り、乳・乳製品や動物性タンパク質のとり過ぎに気をつけること。マグネシウムと亜鉛の不足にも要注意。

トリプトファン比の高い食品をとる

 トリプトファンを多く含むレバー、チーズ、鶏卵などの食品をとるように推奨している健康本を良く見かけるが、これは末梢セロトニンを増やすだけの結果となりむしろ逆効果となる。

 トリプトファンはタンパク質を多く含む食品、特に肉類、魚介類、豆類、乳・乳製品などの高タンパク質食品に多く含まれているが、脳内セロトニンにとってはトリプトファンの血液脳関門の通過量が律速となり、トリプトファンに比較してフェニルアラニンやロイシン(分岐鎖アミノ酸)の多い肉類、魚介類、乳・乳製品などを摂取し過ぎると、結果的に脳内のトリプトファンとり込み量が少なくなり、セロトニン合成量も減少する。

 パンやパスタ、うどんなど小麦食品を、米、蕎麦などに変えることにより、トリプトファン比は随分改善される。

筋肉を増やし、筋肉を落とさない(カロリー制限による減量はダメ)。

 筋肉はトリプトファン以外のアミノ酸を多く必要とすることから、筋肉量が増えると血液中のトリプトファン比が高くなり脳内へのトリプトファン通過量は増える。

 逆にカロリー制限により筋肉量を落としてしまうと、血液中のトリプトファン比は下がり、結果、脳内セロトニン量も減少することになる。

 脳内セロトニン量が減少すれば基礎代謝は低下し、中枢神経の働きも悪くなり、より肥満となり、再度ダイエットという悪循環にはまってしまう。

 

 いずれにしても、肉類、乳・乳製品などのトリプトファン比の低い食品のとり過ぎに運動不足が重なれば、セロトニン不足に陥ることになる

 逆に、動物性タンパク質を多く摂っても、充分な運動により筋肉を鍛えていれば脳内セロトニン不足は起きにくいということになる。

明日はエストロゲンとの関係やトリプタン製剤の作用などについてお話します。