健康に良いと言われるものと、毒として作用するものがあるんです。健康によいといわれるのは反芻動物の消化器官細菌で造られるバクセン酸というもので、体内で共役リノール酸(ルーメン酸)に代謝されます。この共役リノール酸はω7系の脂肪酸ですが、プロスタグランジン1系などのエイコサノイドの生成を亢進します。抗がん作用があるとの事で、サプリメントとしても市販されているものです。これらのトランス脂肪酸は分析方法も確立されており、その影響も単品として調査することが出来ます。

 

一方、工業的に製造される精製植物油(サラダ油やマーガリンなど)などに含まれるトランス脂肪酸はプログラスタンジン2系の炎症性エイコサノイドの生成を亢進し、活性酸素の発生や炎症を亢進することには議論の余地は有りません。

 ところで、植物油や魚油に含まれるトランス脂肪酸にどれくらいの種類があるかご存知でしょうか?

 二重結合の数により多くなり、リノレン酸(二重結合:3)では2の3乗-1=7のトランス脂肪酸、EPA(二重結合:5)では2の5乗-1=31、DHA(二重結合:6)では2の6乗-1=63が有り、ほとんどが同定されていない(分析できない)のです。

 そのため、魚油の精製油には100種類以上のトランス脂肪酸を含む可能性もあります。

 このようなことから、エイコサノイドの代謝にかかわる事のないωー9系脂肪酸などのトランス脂肪酸などを定量し目安にして議論がなされる事になります。

 

 少し、一般の方には難しくなったかもしれませんが、要は、

●反芻動物のトランス型の脂肪酸と精製・加工油に含まれる工業製トランス脂肪酸を混同してしまうことは、「味噌と○○を一緒にする」ようなものだということ。ただし、昔ながらの低温圧搾法による植物油にはトランス脂肪酸はほとんど含まれていません。工業的に精製加工されるときに生成される毒性のあるトランス脂肪酸は、ダイオキシン類と同じように人間が製造した自然界には全く無い化学物質なのです。

●工業的に造られたトランス脂肪酸はほとんどのものが分析できる状態でなく、摂取すると健康を害する事だけは分かっていると言う事です。

 

さて、あなたが有能な行政担当官だったら、どのようにして国民を欺きますか?

 

答えは昨日記述しましたように、トランス脂肪酸に関する英文の原文と和訳を対比してみるとよく分かります。

 

自分の健康は自分の頭で考え、自分で守らないといけない世の中になってしまっているという事なのです。